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小児科の「現在」

「小児科」の抱える問題点とは?

 小児科医が必要な理由は分かりました。では、いよいよ本題です。小児科医は本当に足りないのでしょうか。小児科医が何人いれば、「足りている」ことになるのでしょうか。
 この問い、実は答えられません。どういう状態を健全と考えるかによって、答えが全く変わってしまうからです。つまり、医療を受ける側が何を期待するのか、医療を供給する側がどういう運用をするのかによって、同じ人数を「足りている」とも「不足だ」とも言えるわけです。
 ここ数年、夜間や休日に小児科医の受診を求める患者さんが増える傾向にあります。
 これは急病にかかる子どもが増えたということではありません。核家族化で身近に相談できる人が減った結果、朝まで待たずに受診させたいと考える親御さんが増えたと解釈されています。
 そして小児科医が「足りない」と言われるのは、小児救急を支えるだけの人数がいないという意味合いなのです。
 一説には、小児救急を訪れる患者さんの8割が救急受診の必要がないとも言われ、これが小児科医を疲弊させる原因になっています。ただし重篤である危険性を考えれば、判断がつかない以上、受診を急ごうという親御さんの判断を責めることはできません。
 受診者側は、そういった駆け込みに応えられる体制を期待していることは分かります。そして、小児の時間外受診は今後も増えこそすれ減らないだろう、と予測されます。一方で現場の小児科医たちは、患者の容体が本当に悪くなった時に引き受けてくれるベッドや小児集中治療病床が圧倒的に足りないという不安も抱えています。この状態のどこまでを小児科医がカバーすべきなのか、を決めた時に、小児科医が「足りている」状態も定まってきます。
 これに関して、供給者側である日本小児科学会が05年4月にまとめた「病院小児科医の将来需要について」を見てみましょう。
 小児科の当直が過酷なのは既に述べましたが、現在小児救急を実施している病院の勤務を当直体制から夜勤体制に変えるためには、全国で2000人余りの小児科勤務医増員が必要と試算されています。
 現在の小児科勤務医の総数は約6500人です。人気がない、儲からない、の現状からすると、ちょっと非現実的な増員数になります。このため最終的には、小児救急実施施設を集約すると共に、千人の小児科勤務医増員が必要と結論づけました。
 なぜ「集約」が提言に入ってくるのか、それは受診者側の期待に合致するのか、見ていきましょう。

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