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今さら聞けない 健康保険って、どうなってるの?

10-2-1.JPGあなたが受診の際に持参する健康保険証。
あの紙切れの裏側に、こんな意味が隠れていると知っていましたか?

監修/濃沼信夫 東北大学大学院教授
    中村利仁 北海道大学大学院助手

世界に冠たる国民皆保険制。

 ちょっと考えてみてください。病気やケガで医療機関を受診した時、特に注文しなくても、必要な医療行為は不足なく行われるだろうと期待しますよね。それから、A病院は良い医療を提供しているけれどどちらを選ぶべきか、なんてこと普通は考えませんよね。
 医療でこの摩訶不思議な現象を起こしている仕組み、それこそが国民皆保険制の健康保険です。
 えっ? 何を言っているのかチンプンカンプンですか。では、そもそも、健康保険とは一体何なのか、から話を始めましょう。
 医療を受けるには、それ相応のお金が必要です。検査機器やベッドなど医療機関の施設を利用し、医師や看護師による専門的サービスを受け、検査や投薬ももちろん、それぞれにお金がかかります。
 一方で、病気やケガは、いつ起きるか分からないもの。こういった、いつ起きるか分からないけれども、起きてしまうと負担が大きいものに対して、まとまった人数でお金を出し合って備えるのが保険です。ご存じですね。
 普通の商品やサービスに対する保険は、備えたい人が自由意思で加入するのであって、備えたくない人は加入しません。加入しなかった人は、何か起きても保障されないだけ。自己責任、自業自得で済まされます。
 しかしこと医療に関しては、誰もが必ず公的な保険に加入することになっています。なぜこういう仕組みになっているかを突き詰めると、健康保険の何が問題なのかも浮き彫りになってくるので、後ほどジックリ取り扱います。
 何はともあれ、日本の医療は国民皆保険制です。皆さんの所得に応じて、かかった医療費の一定額以上を保険者が支払ってくれます(後述)。一定額に達しない場合でも、原則7割は保険者が払ってくれます。
 これを医療機関側から見てみましょう。医療は慈善事業ではありませんので、検査治療をしました、お金は取り損ないました、では医療機関が潰れてしまいます。
 もし患者が健康保険に入っていなかったら、患者の懐具合と相談しながら施す医療を決めねばなりません。国民皆保険だからこそ、必要と思われる医療措置を施せます。これによって患者側も安心できるわけです。実際、国民全員をカバーする公的医療保険のない米国では、人によって受けられる医療がかなり異なります。
 また、この国民皆保険制のもとでは、医療行為それぞれの値段(〓診療報酬=05年12月号参照)と、ある病気に対して適正と考えられる医療の範囲が、定められています。医療機関は取り決めを超えた費用を保険者に請求しても払ってもらえません。この仕組みがあるから、過剰な医療行為はなかろうと、どこの医療機関に行っても値段があまり変わらないだろうと思っていられるわけです。

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