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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

今、あえて問う 医療は危険か安全か。

患者にできる リスクを下げる方法

 医療機関の努力だけでは事故防止策が足りないとしたら、どうすればよいのでしょうか。
 はい、お分かりですね。患者自身が医療の主人公の自覚を持って、医師に「お任せ」にするのでなく、リスクを下げるよう努力すれば良いのです(創刊号参照)。
 皆さんも普段「気分が悪くなったら知らせて」などと言われていると思います。これは、健康被害が起きかけの時に、その被害拡大を防ぐため大変重要なことです。「異変が起きたら連絡」は、ぜひ励行してください。
 もっと積極的に関与できることもあります。医療を受ける時、普段と違ったり、事前の説明と異なることがあったら、すかさず「なぜ?」と質すことです。
 そんなことをしたら気分を害されるのでは、と心配になりましたか? 事はあなた自身の命や健康の問題。いちゃもんでない限り、遠慮は無用です。そもそも、医療事故が起きてしまったら、医療者側も大変な窮地に立たされます。それを未然に防いであげようというのに、気分を害する方がおかしいのです。逆に医療者側から求められたなら、進んで協力しましょう。
 これは単なる精神論ではなく、自分の医療に積極的に関与することは、非常に合理的な事故防止策でもあります。  医師や看護師があなたの名前を間違える、これは起こり得る話です。でも、あなたや家族が、あなたの名前を間違えるはずはありません。病状や治療法に関しても同じ構図があります。医療知識さえきちんと持っていれば、ミスを防ぐ最後の関門に最もふさわしいのは、あなた自身なのです。
 持っているべき医療知識にしても、「素人だから」とあきらめないでください。体全体や病気全般について何人分も理解していなければならない医療者と異なり、あなたに必要なのは、自分の疾病とその部位に関する情報だけ。十分勉強できるはずです。
 勉強の第一歩は、インフォームド・コンセントの場であり、診療の場です。疑問点は早いうちに遠慮せず質すとともに、理解するのにどうしても時間がかかりそうだったら、「どの本を読めば理解できるか」「どうやって勉強したらよいか」などと尋ねてみてください。それが、さらに次の勉強の糸口になります。
 ただし、勉強したからといって、治療法を医師に無断でアレンジするのは絶対ダメ。それこそ事故のもとです。疑問や要望が出てきたら、必ず医師に相談し、治療法を変更するにしても双方納得のうえで行いましょう。そして納得したからには、指示を守りましょう。
 要は、医療者側とよくコミュニケーションを取ること、それができないような医療機関は願い下げにすること、と今回もまた至極当たり前の結論になるのでした。

被害が出てしまったら? 紛争処理のあり方。  どんなに関係者が気をつけても、医療事故による健康被害の可能性はゼロになりません。このため、事故が起きてしまった場合に、どうやって被害者を救済し再発を防ぐか、というのも医療安全を補完する重要な論点です。  現在、当事者間で話がつかない場合は医療訴訟に持ち込むしかありませんが、過失の有無が焦点となるため、訴訟は非難の応酬になりがちで、被害救済と再発防止には必ずしも適していないのでないかとの声があります。  来年4月から「裁判外紛争解決手続(ADR)法」というものが施行されます。これに併せて、裁判以外の第三者機関で紛争処理にあたろうとする試みが各地で始まっています。この問題に関しては、後日あらためて採り上げます。
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