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特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

診療報酬第2弾 病院の行動原理教えます。

だから病院はこう動くのです。

 急性期病院がめざしている方向のうち、看護師の数が増えることは患者から見ても何の不満もないと思います。しかし、在院日数短縮の方は必ずしもありがたくないかもしれません。
 入院期間を短くしようと診療密度が上がって慌ただしいだけでなく、治療がある程度順調に進んだら、もう少しゆっくりしていたいと思っても退院させられるからです。これは、空きベッドを極力減らしたいという病床稼働率の問題とも絡んでくるので、ベッド待ちの患者が多い人気の病院ほど慌ただしくなるのは避けられません。
ちなみに、診療密度を上げるには事前に計画をきちんと立てて粛々とこなす必要があります。事前に計画が立てられるなら、医療費もある程度枠をはめられるはずとの発想から、どんな治療をしても支払額は一定という包括払い制(DPC、vol.22参照)が導入されてきています。DPCは不要な医療を抑制する切り札として、間もなく急性期病院の主流になると考えられています。これは、また別の機会にじっくり採り上げます。
話を戻しますと、状態が悪いまま放り出すような急性期病院はないはずで、早く良くなっての退院は歓迎すべきことかもしれません。でも急性期病院に入院するなら、患者側は「はい退院」と言われる心の準備をしておいた方がよいでしょう。
リハビリが必要な場合、どうなるのか心配になったでしょうか。いきなり自宅に帰すのは当然無理があります。そこで登場するのが「連携」です。
 最初から、リハビリを受ける別の医療機関を決めておき、複数の医療機関で治療計画を共有、診療を分担する「地域連携パス」が、大腿骨頚部骨折の患者さんに関して、4月の改定で新たに点数をつけられました(患者の送り出し手、受け手双方に1500点ずつ)。
 さて、患者からは特に不満がないと書いた看護師数に関して、現実には全国的に大きな問題が起きています。このことも知っておいていただくと視点が広がると思います。
 精神的にも肉体的にもキツいため、どこの病院でも看護師が毎年1割程度は辞めます。
 その補充だけでも例年苦労している病院が多いのに、多くの大規模病院では「7対1」にするために看護師の追加採用が必要になりました。
 医療は日進月歩なので、看護師は、いったん職場を離れると簡単には復帰できません。資格を持っている人は多くても、急性期病院でフルタイムに働けるような人はそんなに余っていないのです。
 医療事故のこと(06年11月号参照)を考えると、病院側としても、資格さえあれば誰でもよいなんて絶対に言えません。
 現実問題として、希望の数を満たすには、やり甲斐の部分も含めて良い待遇を示し、他の病院から引き抜くしかないのです。引き抜かれた病院は、看護師配置基準を満たせなくなってランクが落ちることになります。
 特に、夜勤帯に1病棟あたり2人以上の看護師を配置し、1人あたりの平均夜勤時間を72時間以内に収めるという2条件を満たせなくなった場合は、1日たった575点の「特別入院基本料」の対象となってしまいます。
 引き抜き合戦で看護師人件費の相場が上がれば、さらに病院の経営は圧迫されます。また看護師を確保したとしても、患者に人気がなくベッドを埋められなければ収入になりません。倒産につながる競争が始まっているのです。
 病院の数が多すぎるという政府の現状認識からすると当然の政策誘導ではありますが、実際につぶれる病院が出てきた時に社会問題化することが予測されます。

紹介状に関しても大きな改定がありました。  4月の改定では、いわゆる「紹介状」、診療情報提供料の取り扱いも大きく変更されました。これまでは紹介元や紹介先がどのような医療機関かによって細かく仕分けされていたのが、250点に一本化されたのです。  さらに、それまで全患者数に対する紹介されて来た患者の割合(紹介率)が基準を超えていると様々な優遇措置があったのですが、単純な紹介率のみによる加算が全廃され、紹介率を上げようと努力してきた医療機関に衝撃を与えました。  このほか、セカンドオピニオンの紹介料(500点)が新設されています。
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