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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

その胸の痛み 狭心症・心筋梗塞では

なってしまったら

 動脈硬化による虚血性心疾患は当然治療が必要です。ただし動脈は全身にあり、たまたま心臓に症状が出ているだけ。他の部位にも動脈硬化があることを前提に対処することになります。
 心筋梗塞は、一刻も早く救急車を呼ぶしかないので、起こす前に何とかしたいところです。前段として狭心症の治療を説明します。 
 狭心症の治療は、症状の安定度と重症度によって異なります。症状があまり重くなくて安定している場合は、虚血を予防あるいは軽減するための投薬が行われます。使われるのは、心臓の拍動を抑制する薬、血管を拡張させる薬、血管の痙攣を抑える薬、血圧を下げる薬、血液を固まりにくくさせる薬などです。
 生活習慣を改善して危険因子(前項表)を減らしていくことも大切です。これは、まだ狭心症になっていない人の予防策としても有効です。
 生活改善の中で特に絶対的なのが禁煙です。発症の危険性が、喫煙を続けている人の半分に減ります。がんや肺の病気と異なり、喫煙期間の長さは関係ありません。禁煙するだけで危険性が下がります。後述する冠動脈バイパス術を行った後や心臓発作の後に死亡する危険性も下がります。
 他の危険因子に対しても、生活習慣病をコントロールするのと同様の治療が行われます。
 急速に症状が悪化している場合を急性冠動脈症候と言い、すぐに入院して冠動脈造影検査が必要です。多くは、手術で冠動脈を物理的に直すことになります。
 手術には大きく分けて2通りの方法があります。
 一つは、狭くなった血管の中で小さな風船を膨らまして流路を広げる「血管形成術」。もう一つは詰まってしまった部分の末梢にバイパスをつないで新たな流路をつくる「冠動脈バイパス術」です。
 血管形成術は、多くの場合、手首や腕や太ももの動脈からカテーテルを入れて、詰まっている部分まで到達したら風船を数十秒間膨らませて血管を広げます。
 しかし数カ月経つと、同じ場所が再び狭くなってしまうことが珍しくないため、金属の網でできた筒(ステントと言います)を当該部位に膨らませて置くのが一般的です。
 バイパス術の方は通常、全身麻酔下で人工心肺装置を使って心臓を止め、内胸の動脈や胃の動脈を冠動脈につなぎます。つなぐ血管の数が多ければ前腕の動脈や足の静脈を移植します。つなぐ血管が1本か2本であれば、心臓を動かしたまま手術することもあります。
 血管形成術とバイパス術とで、治療効果に大きな差はないと考えられています。血管形成術の方が患者の負担は少ないので、それで済むなら血管形成の方が選ばれますが、狭窄の場所や数によってはバイパス術を選んだ方がよいこともあります。どちらを選ぶかは、血管造影検査などで調べます。
 手術すれば、かなり高い確率で症状改善が見込まれます。とはいえ、手術の効果は永続的なものではなく、一種の対症療法に過ぎません。喫煙や高血圧、脂質異常、高血糖など動脈硬化の原因となっている危険因子を取り除かないと、またどこかに虚血が起きます。心臓とは限りません。
 生活習慣病の特集や脳卒中の特集でもおなじみですが、危険因子の少ない生活習慣で、心臓をいたわって健やかにお過ごしください。


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