誌面アーカイブ

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

患者を支える2

全国心臓病の子どもを守る会
*このコーナーでは、様々な疾患の患者団体や患者会がどのように患者さんを支えているのか、ご紹介していきます。

 100人に1人。先天的に心臓に異常のある新生児は、それほど多いのだそうです。近年は全国で毎年約100万人が生まれていますので、約1万人に心臓の疾患が認められるということになります。
 現在は、およその割合として3分の1は、特に治療の必要がないか経過観察程度の軽いもので、残りの多くも小さいうちに手術や内科的治療を行えば状態が改善されるようになりましたが、依然として重症者も多く、中には心臓移植しか助かる道がない場合もあるそうです。最後に挙げた移植については、募金活動などをご覧になった方もあることでしょう。
 45年前は、今とは違い、手術できる医療機関は数えるほどしかありませんでした。手術費用も高額で、家を売って手術を受けるなど、親にとっては医療費が大変な時代でした。この状況を何とかしようと、同じ悩みを抱えた家族が集まり、支え合い励まし合って63年11月に結成したのが、今回ご紹介する「心臓病の子どもを守る会」です。
 活動は大きな実を結び、現在では心臓手術などの治療費は「育成医療制度」で助成されます。小児心臓病治療も大きく進歩しました。とはいえ、依然として毎年1万人が心臓に異常を抱えて生まれ、親御さんが心細い思いをしている状況に変わりはなく、会も活動を続けています。
 訪ねてみましょう。同会の事務所は、池袋サンシャインシティ近くの雑居ビル7階にあります。この日迎えてくれたのは、事務局の水谷幸司さんと下堂前亨さんの男性2人。会の運営は、当事者である会員自らが行いますが、この2人とパートの女性の3人が専従者としてそれを支えています。
 「当事者だけでは、何かあった時に突然活動が停滞することになりかねないので、会を安定継続させるために専従者を入れたと聞いています」
と、大学卒業と同時に会へ飛び込んで28年の水谷さん。専従者を雇えるのは、全国5千家族以上の会員が毎月会費を納めるなど、安定した財務基盤があるからです。「会費を基本にした患者会運営は、一方的に助けてもらうんじゃない、当事者として活動するんだという意思の表れです」
 会は、①孤立しがちな患者家族の経験を交換しあう②個人の努力ではどうにもならない福祉制度や医療制度の改善を国などに要請していく、の2つを大きな柱に、支部(解説参照)を基礎に活動しています。②で様々な成果をあげているだけでなく、①に関しても24頁建ての会報を45年間毎月欠かさず出し続けてきた実績があります。もちろん電話相談なども行っています。
 「不安解消には、同じような境遇の方や先輩とお話しするのが一番いいんです。インターネットで情報が氾濫する中、顔を見て励まし合える人と人とのつながりが大事です。そこは会でしかやれないことと思っています」。会員になれば、他の患者・家族と交流できるので不安も和らぐという仕組みです。

ここにも医師不足の影

 盤石に見えるこの会にも、医師不足が大きな影を落としています。小児科の勤務の過酷さと不採算なことはよく知られているところですが、小児心臓病の分野でも難しい手術ができる医療機関が都市部に偏っているのです。また、手術を受けた人たちは、小児循環器科で継続的にフォローを受けますが、先天性心疾患患者が30代40代を迎えるようになって、そのフォローをしてくれる医師や医療機関が少ない、そんな新たな悩みにも直面しています。
 「就学前、学齢期、思春期、就労期といった患者さんのライフステージに応じた支援が必要です。やろうと思えば、いくらでもすることはあるのですが、マンパワーや財務状況を考えると、正直のところ現状が精いっぱいです」
 実は会員数が、02年の6千家族をピークに減少へ転じています。組織に属することを嫌う人が増える一方で医療は着実に進歩して、早いうちに手術を終えて会を退会する人が、新たに入ってくる人を上回るようになったからです。
 「毎年1万人という数字を考えれば、まだまだ独りで悩んでいる親御さんは全国にたくさんいると思うんです。もっと会の存在を知ってもらうように頑張らねばと思いますし、独りで悩まないで気軽に相談して、と言いたいです」

 会の趣旨は、病気をもつ親・本人の交流、医療や福祉政策の勉強、社会に向けての心臓病への理解を求めるなど。国へ医療・福祉の改善を求めて請願もしている。会報「心臓をまもる」は会員の体験談や思いなどを載せて、支部を通じて会員に届けられている。  主な会員は、先天性・後天性の心臓病児者とその親で会の活動に賛同する人。佐賀県を除く46都道府県に支部がある。会費は支部ごとに決められていて、月額600~1000円程度。支部はサマーキャンプや医療相談会などを開催している。15歳以上になった患者本人たちでつくる会内組織「心臓病者友の会」(心友会)もあり、患者同士の交流が行われている。  同会の連絡先 Tel. 03-5958-8070 URL http://www.heart-mamoru.jp/
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