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地域医療が危ないって どういうこと?

どうするのか

 将来は医療機関を集約化するとして、でもまず眼前に危機があります。実は、現在の官営に多い100~300床程度の総合病院は、大学医局から派遣される医師からすると「怖い所」です。
 なぜかというと、医師養成を主に担っている大学医局(06年9月号08年12月号参照)が専門分化し過ぎていて(08年9月号参照)、他医局の領域は不案内という医師が多く、全領域の医師が揃わない総合病院では、不案内な領域の診療を強いられる医師が出るからです。「怖い」との中には訴訟のリスクも含まれます。全領域の医師を揃えるには一定の医師定員が必要で、そのための規模は500床程度になります。小さな官営病院は定員を満たしていても怖い所、まして定員に欠けていたら、お分かりですね。
 縦割り医師養成の方にも問題があるとの反省から、卒業後2年は幅広い診療科を回る新臨床研修制度が始まったものの、効果が出るより先に医師不足を加速させました。新年度から制度見直しが行われることになっています
 このような状況なのに、まだ多くの自治体が、ただただ大学医局に対して医師派遣の要請を続けています。
 医局側でも、ない袖は振れませんし、「怖い所」に送り込むと評判が立つとますます入局者が減ります。入局者が減れば『地域最後の砦』である大学病院そのものの危機です。大学自体も独立行政法人化により、病院が赤字を出すと潰れる構造になりました。
 大学医局だけに頼る限り、眼前の危機はしのげません。現状の官営病院を支えるには、1人で幅広い分野を担当できる地域病院基盤型の総合診療医とその養成システムがどうしても必要です。
 実は地域病院基盤型の総合医になりたいと思う医学生は少なくありませんが、その養成コースがほとんどありません。また専門医として働いている勤務医も、開業する場合には総合的能力を身に着けたいと願うものなので、養成システムに対するニーズは確実に存在します。医師養成には現場(つまり病院です)が必要です。養成コースの構築に地域として協力すれば、お互いに得るものが大きいでしょう。
 また、より根源的なポイントに立ち返ると、医師不在では他の有資格者がいてもサービスを提供できないし報酬も受け取れないという重大な法的制限があります。一方で、地域の人々が求めているものの中には、実は医師ではなく、ソーシャルワーカー、看護師、薬剤師、臨床心理士などのコメディカルによって提供される方がふさわしいものも数多く存在します。
 そういったものを、病院内に医師不在でも報酬を受け取れるようにしたらいけないのか、とかこういった制約は本当に妥当なのかといったことは、実は医療界内部では議論しづらいことで、矛盾を感じたならば地域住民としてだけでなく国民・有権者として、もっと外から発言してもよいことではないでしょうか。

公立病院改革ガイドライン  総務省が07年12月に出しました。①経営の効率化②再編・ネットワーク化③経営形態の見直しという3つの視点を掲げ、官営病院への赤字補てんは、地域医療に果たしている役割の範囲内に限ることをうたっています。これに従えば、役割を果たさずに赤字だけ出しているような病院は淘汰されざるを得ません。
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