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5分ルール


つじつま合わせの診療報酬改定

 外来管理加算の歴史を振り返ると、もともとは内科の再診料に上乗せする「内科加算」でした。眼科や耳鼻科などに比べて処置や検査が少ない内科の点数を上げるという不均衡是正のために設定されたのです。ところが、厚労省の担当者は「いつの間にか"何もしない加算"になってしまった」と言います。
 しかし、処置やリハビリのような目に見える医療行為と同様に、患者に対する説明を診療報酬で評価するのであれば、医師の技術料として独立の点数にすべきとの声もあります。つまり、今回の「5分ルール」は医療費を抑制するために、何とかつじつまを合わせた変更とも言えます。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
 診療報酬は、医療を所管する厚生労働省が中心になって原案を作成し、中央社会保険医療協議会(中医協)の審議を経て改定されます。中心になるのは、医師免許を持った行政官(医系技官)と呼ばれる官僚です。彼らは、臨床現場をほとんど経験せずに机上の政策を練る傾向があるため、時として「現場無視」と批判されるような政策を生み出すことがあります。今回の「5分ルール」は、その代表例と言えるでしょう。
 また、診療所や病院単位で医療政策を考えていることも問題です。地域医療の崩壊を食い止めるためには、診療所や病院が一体となって、「地域完結型の医療」をつくる必要がありますが、そのような政策になっていません。
 現在、医師不足が深刻な問題となっています。このため、08年度の診療報酬改定は「病院勤務医の負担軽減」が緊急課題に位置付けられました。産科や小児科など、医師が不足している診療科の診療報酬を増額するため、診療所の再診料を引き下げ、その財源を充てることが検討されました。
 これに対して、開業医を中心に組織する日本医師会が猛反対したため、最後まで議論がもつれました。再診料の引き下げをめぐる綱引きの中で、「医療財源を病院と診療所間でどう配分するか」という議論に終始しました。最終的には、再診料の引き下げではなく、外来管理加算に「5分ルール」の要件を導入するなど、診療所の報酬をカットするような改定をすることで決着しました。
 「医療崩壊」と言われる中、ようやく社会保障費の抑制にストップがかかり、国民の生活を重視した政治に変わろうとしています。こうした中、医師や看護師をはじめとする医療従事者は、専門的な資格を持つ貴重な医療資源です。確かに、1人の患者に多くの医師や看護師がかかわることは理想です。しかし、医療資源に限りがある以上、まずは私たち1人ひとりが医療の在り方を考える必要があると言えるでしょう。

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