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情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

ストレスなぜ悪いのか


改めて何が悪いのか。

56-1.1.JPG 前項でキツネにつままれた気分になったかもしれません。ストレスが原因で体を壊すとか心を病むとか、そういった情報が世の中に多く流布されています。あれは一体何なんだと思いますよね。
 もちろん、そういった情報はウソではありません。ここからは、そのメカニズムを説明していきます。
 環境の変化に適応するというのは、きちんと適応できる限り、人生の楽しみと言っても過言ではありません。だって何も変化がない人生を想像してみてください。退屈で仕方ないはずです。
 しかし、前項のゴムボールの例えで、足を離さず、ずっと踏んづけっ放しにしたら、どうなるでしょう。変形したまま戻らなくなったり、下手をすると空気が抜けてしぼんでしまいますよね。
 これと同様に、私たちも環境変化の程度が耐えられる限界を超えてしまうと、対応しきれなくなり、心身に不調を来たすようになります。
 ところで、ストレスを心の問題、気の持ちようの問題と思っていないでしょうか。その認識は間違いではありませんが、すべてでもありません。というのも、ストレスの多い状況に置かれると、体は無意識のうちに、ストレッサーと闘うか逃げ出すかの準備を始めるからです。これは「闘争・逃走反応」と呼ばれます。自律神経が緊張し、あるいはアドレナリンなどのホルモンが分泌され、心拍数、筋肉への血液流入量、呼吸数、血圧、代謝などが増加するのです。免疫の活性も変わります。
 文明が発達する以前は、生命の危険も日常的にあったはずで、この反応は極めて重要だったと思われます。しかし現代社会では、攻撃したり逃げ出したりという短絡的な行動は許されません。準備するだけ損です。
 しかも、もしストレッサーが慢性的に強く作用しつづけると、これらの反応が持続することとなり、平時の状態に回復する機会を逸しますので、体の各部に器質的あるいは機能的な障害が引き起こされます。このような状態が心身症です。
 ストレス状態と心身の不調とが悪循環を引き起こしてしまうこともあります。

PTSDと身体表現性障害  日常のストレスよりはるかに強く、生命の危機に瀕するような事態でのストレスに対する反応は特殊なものとなります。これを心的外傷後ストレス障害(PTSD)とよんでいます。日本では、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などが、このような外傷性ストレスの例と考えられています。

 また、身体表現性障害とは、一般身体疾患を示唆するような身体症状の訴えがありますが、適切な検査をおこなっても、症状を裏付けるような所見が認められない場合の診断名です。ストレスが背景にあると考えられています。いわゆる不定愁訴や自律神経失調症と呼ばれているものの多くは、身体表現性障害の可能性が高いと思われます。


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