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免疫きほんのき 2


ポイントは、鍵と鍵穴の関係
(本文)
 進化の過程で出てきた新しい免疫細胞は、TLRも残しつつ、別の目印も利用するようになりました。ヒトの場合、HLAと呼ばれるものです。
 HLAは、自己の正常細胞であれば共通して表面に持っている〝鍵〟のようなもの。たんぱく質の構造物で、実は免疫細胞自身も持っています。免疫細胞の表面にはこれに対応した〝鍵穴〟があり、パトロール中にみつけた疑わしきものが鍵を持っているかを確かめることができます。
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 最も分かりやすい例がNK細胞。前回、「例外的に自然免疫を担うリンパ球」とだけご紹介したNK細胞ですが、標的とするのは、がん細胞やウイルス感染細胞。血流を巡る間に何やらそれと思しき細胞に出くわしたとします。しかし、相手は鍵を持っていてNK細胞上の鍵穴にぴったりはまりました。その場合、かなり怪しいけれども、「これは自己なのか。手を出さずにおこう」と攻撃を控えるのです。
 非自己の共通パターンを認識する道具であるTLRとは逆で、「自己かどうか」のチェックポイントがHLAというわけです。ただ、標的となる細胞の全体をくまなく精査するわけでなく、表面のHLAだけで判断する点では、TLRの病原菌認識と大差ない簡略ぶりにも思えますね。

がんは非自己?
 ちなみに、がん細胞もウイルス感染細胞も元は自分の細胞ですが、この「自己の目印」たるHLAが消えたり減ったりしていることが分かっています。そのため「自己ではない」として攻撃が実行に移されることになるのです。
 そもそもがん細胞は、変異によって本来の役割を放棄し、勝手に増殖を始めてしまった細胞。その身勝手を許しておけば最終的に他の細胞や臓器を侵し、全体の生命を奪うことになりますから、もはや「自己」と認識すべきではありませんよね。ウイルス感染した細胞もしかり。というわけで、HLAによる識別は非常に具合がいいんですね。
 ただし、がん細胞は時に一枚上手。しばしば、PD-L1と呼ばれるたんぱく質を「身分証明書」として表面に持つことで、NK細胞等の攻撃をくぐり抜けてしまうらしいのです。このたんぱく質は正常細胞の表面にも存在しているため、NK細胞は怪しみつつも「あれ? 鍵はないみたいだけど、証明書があるし、正常な細胞なのか」と誤解して見逃してしまうというわけです。

臓器移植後の拒絶反応はなぜ起きる? 答えはHLAの型が違うため。他人の細胞にあるHLAは、自分の免疫細胞の鍵穴と合いません。そのため、「非自己」と分かって排除の対象とされてしまうからです。これは、HLAを形づくっているアミノ酸の並び方が、人によって少しずつ異なるため。  ちなみに輸血で拒絶反応が起きないのは、赤血球が例外的にHLAを持たないからです。しかしご存じのとおり、赤血球にもA、B、O、ABの4つの型があり、同じ型でなければ拒絶反応が起きてしまいます。
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