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がん③ 緩和ケア、なぜ大切なのか


どこで受ける? 広がる選択肢

 症状が強く、専門性の高い緩和ケアを受ける必要がある場合には、緩和ケアに精通した医師を受診することが大切です。
 がん診療連携拠点病院には、緩和ケア外来や緩和ケア病棟がなくても、身体症状を担当する医師、心理精神症状を担当する医師、薬剤師、看護師から構成される「緩和ケアチーム」が存在し、各科の依頼で病棟などへ出向き診療を行っています。
 緩和ケア病棟は、いまだに亡くなる直前に入院する病棟、入ったら死ぬまで出られない病棟というイメージを持っている方も多いと思いますが、時代は変わりました。
 現在、緩和ケア病棟はPCUと呼ばれ、がんの病期に関わらず、一般病棟では十分に対処できない強い症状がある場合に入り、症状が改善したら、一般病棟に戻ったり、外来通院へ移行するために使用する病棟となっています。術後や重篤な病態管理が必要な時に使用するICUや重篤な心臓疾患治療時に使用するCCUなどと同様の存在なのです。
 転移・再発と診断された時点で苦痛が強い場合は、まずPCUで症状を緩和してから、各診療科の病棟や外来で初回の抗がん剤治療を開始したり、抗がん剤治療中でも、苦痛が強まったらいったんPCUへ入院し体調を整えてから再度、抗がん剤治療を再開するということができます。さらに、すべての抗がん剤が効かなくなっても、症状の強さや自宅で看病する家族の休息(レスパイト)を含めて入・退院を繰り返すなど柔軟な対応が可能なのです。
 緩和ケア病棟のある施設は、インターネットで国立がん研究センターのホームページ(がん対策情報センターがん情報サービス)や、日本ホスピス緩和ケア協会のホームページを見ると調べられます。

家でも可能

 病態が安定していれば、病院へ入院して行っていた経管栄養、中心静脈栄養、酸素療法や症状緩和治療・ケアが自宅でも可能な時代になりました。ベッドなど医療用機器のレンタルも迅速に進むようになっています。
 住み慣れた自宅で家族やペットに囲まれ気持ちが穏やかになることで、痛みや苦しみがさらに和らぐことも多いのです。
 ただ、在宅緩和ケアは地域格差やスタッフの技術格差が大きい分野です。また、潜在的な需要を含めれば、人材も設備も、まだまだ十分と言うには程遠い地域が多いことも事実です。
 それでも在宅緩和ケアの需要の高まりに伴い、在宅医療に力を入れる開業医や訪問看護ステーションは増え、かつては点だったものが線になり、さらには面になった地域も少なくありません。今後のさらなる整備が期待されます。

第5の治療法に

 がんに伴う症状を緩和する薬剤や機器の開発、新たな治療・ケアの研究は近年、急速に進歩を遂げており、手術、化学療法、放射線治療、免疫治療の四つの治療法に加え、緩和ケアが第5のがん治療法として仲間入りする日もそう遠くないと思われます。
 転移・再発がんに罹患したすべての患者さんが、たとえ治癒できなくても可能な限り長期間、がんと仲良く共生でき、旅立つ直前まで心身共に穏やかな当たり前の毎日を過し、そして尊厳あるソフトランディングをできる時代が一日も早く来るよう、緩和ケアに携わる医療者たちの絶え間ない挑戦は続きます。

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