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認知症を知る8 成年後見制度ご存じですか?


法定後見制度の3類型

 続いて、本人が準備していなくても進む法定後見制度を説明します。
 利用するには、本人・配偶者・4親等内の親族・市町村長のいずれかが、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります(コラム参照)。
 本人の判断能力の程度に応じて以下3類型があります。

●後見
 旧民法では、禁治産に相当します。「自己の財産を管理・処分することができない」人が対象です。もう少し平たく言うと、独りでは日常的に必要な買い物をすることすら難しく、誰かに代わってもらう必要のある人が対象となります。
 支援する人のことを「成年後見人」と呼びます。本人に代わって契約などを行う「代理権」、本人の行為をその時点まで遡って無効にする「取消権」(ただし日常生活に関することは除く)と「財産管理権」を持ち、「療養看護義務」を負います。

88-1.1.jpg●保佐
 旧民法では、準禁治産に相当します。対象は「自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である」人です。日常の買い物くらいは独りでできるけれど、重要な財産行為を自分だけでするのは難しいという人が対象となります。
 支援する人のことを「保佐人」と呼びます。本人は保佐人の同意がなければ「重要な行為」(表参照)をできなくなり、本人が保佐人の同意なく行った重要な行為について、保佐人は取り消すことができます。家庭裁判所に申し立てて、保佐対象の行為を付け加えることもできます。

●補助
 旧民法には存在しませんでした。軽度認知症への対応を視野に入れたものです。支援する人のことを「補助人」と呼びます。家庭裁判所の審判であらかじめ定められた特定の行為について、補助人に同意権・取消権や代理権を与えます。日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、補助人の同意や取消の対象となりません。
 「補助」開始には本人の同意が必要ですが、「保佐」と「後見」の開始には本人の同意は要りません。

申し立ての方法

 家庭裁判所へ、申立手数料800円、登記手数料2600円(収入印紙計3400円)や連絡用の郵便切手(数千円、申し立ての際に確認を)を添えて申し立てます。多くの場合で、本人の状態を医師に鑑定してもらうことが必要となり、その費用は個々の事案によって異なりますが、通常は10万円以下の場合が多いようです。
 家庭裁判所は後見の必要性を認定すると、候補者リストの中から支援者を選びます。家族などが、支援者の希望を伝えることはできます。
 申し立てから成年後見開始まで、ほとんどの場合は4カ月以内で進みます。


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