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控えようリン酸塩 摂ろうマグネシウム~【年間特集】血管を守る③

疑わしきは避け良い材を選ぶ

 CPPのことを知ってみると、リン酸塩に関する食品表示の方法がこのままで良いとは思えません。ただ、これから数年で急に表示されるようになるとも思えないので、気になる場合は自衛策を講じる必要があります。

 加工食品を利用する限り、知らずにリン酸塩を摂取してしまう可能性はあります。自分で生の食材を調理すれば、それは避けられます。後述するような悪影響緩和の効果も期待でき、自衛策の基本です。

 とは言え、多くの人にとって、加工食品を完全に排除するのは非現実的でしょう。まずは購入前に表示をジックリ眺めてみて、リン酸塩の含有量が少なそうなものを選ぶ、という辺りから始めてみてはいかがでしょうか。表示をジックリ見ているうちに、健康的な食生活になっていくという副次的な効果もあるかもしれません。

救世主マグネシウム

 リン酸塩を完全に避けるのが難しいとすれば、血中で発生してしまうCPPの悪影響を何とか緩和できないものかというのも気になるところです。

 その緩和策の有力な候補が、食事でマグネシウムを積極的に摂取することです。

 米国・ボストン近郊のフラミンガムで1948年から行われている大規模疫学調査で、42~64歳の男女2695人のデータから、マグネシウム摂取量が1日50mg増えるごとに冠動脈の石灰化の程度は22%低下するという関係が発見されました。

 また、ラットにリンを過剰摂取させると腎臓の石灰化が起きますが、マグネシウム濃度の高いエサを食べたラットほど、腎臓中のカルシウムとリンの濃度は低くなり、腎臓のカルシウム沈着量は減少したという実験結果があります。

 マグネシウムは、300種類以上の酵素反応や、骨の弾性維持、神経伝達、ホルモン分泌、筋収縮など、ほとんどすべての生体反応に必要です。また、カルシウムが体内できちんと働くためにマグネシウムの存在が必須で、カルシウムが多過ぎる場合には高血圧や心疾患などのリスクが高まるため、カルシウム摂取量の最低でも半分、同量程度までは摂取して構わないと言われています。

 厚労省の平成25年「国民健康・栄養調査」によると、成人男性はマグネシウムを1日に平均約265mg、成人女性は平均約232mg摂取しています。カルシウムは、成人男性で1日に平均512mg、成人女性で1日に平均486mg摂取していますから、カルシウムとの割合としてマグネシウムは不足気味です。

 絶対量で見ても、「日本人の食事摂取基準」(2015年版)の1日あたり推奨量は成人男性で320~370㎎、成人女性で270~290㎎ですから、もっと摂取を増やす必要があります。

 そうなのか、とサプリメントを探すのは、ちょっと待ってください。安易に多量摂取すると下痢など副作用の心配もありますし、腎機能が低下している場合は高マグネシウム血症(意識低下、血圧低下など)を起こす恐れもあります。

 通常の食品から摂取すれば、そうした心配はありませんので、まずはマグネシウムの多い食材を選んで食べるというのが王道です。

 マグネシウムは、ナッツ類や大豆製品、葉物野菜、未精製の穀物、海産物などに多く含まれています。健康に良いと言われる食材ばかりですね。

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