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役所を怖がりつつ、すり寄る 医療業界は自立していない

小松 自分で宣伝するより、あらゆるサービスを熟知した第三者が相談に乗って勧めるのがいいですね。私が言ってた「1ストップ相談」(前回参照)もそういうものです。高齢者になると、医療もそうですけど、医療よりもどちらかと言うと他のサービスの方が重要になりますから。

梅村 介護ではケアマネが担当する建前ですけど、実際にはケアマネは客引きをやってますもんね。1ストップ相談は、生活保護なんかにも当てはまると思うんですけど、そこに行けばあなたとって一番良い医療を相談に乗ってあげますよと、それが広告なのか窓口なのかは分かりませんけれどもね、ホンマはかかりつけ医がそれをすればベストなんですけどね

小松 意思決定支援ですよね。

梅村 そうです。それがやっぱり要ると思いますよね。

小松 月に2回ほど訪問してじっくり話をする、困ったことがあれば必ず相談して解決策を考える。いざというときはすぐ駆けつける。よく出来た息子の役割です。息子より福祉と民間サービスをよく知っている。財産管理などを含めて、東京だと有償でやれると思って画策したんですが、資本を持っている人がチャレンジしようとしませんでした。

梅村 日本のかかりつけ医制度は、残念ながら意思決定支援までを想定していないんだと思います。

小松 意思決定支援みたいなのをやるのにも、規格がすごい重要になるんですよね。サービスの予見性を高める、質を上げる、信頼性を高める、紛争にきちんと対応する、規格は役立ちます。規格は強制力がない分、現場の多様性への対応を邪魔しません。行政はピラミッド支配で、上から単純な内容を繰り返し繰り返し指示して、強制して、あらゆるものを画一化するんですよ。ところが地域包括ケアみたいなのをやろうとすると、個別の情報がすごく重要です。人によって望んでいることが違います。現場のネットワークで対応していくしかないですよ。そのための規格の必要性をすごく言ってたのも、医系技官からしたらカチンと来た理由だったと思います。

梅村 1ストップ相談の仕組み作りや地域包括ケアの規格作りを亀田総合病院でやろうとしたんですか?

小松 亀田総合病院だと、やっぱり個別利害を持っているので、主体にはなれません。地域医療学講座できっかけを作って、それ以後はソシノフというNPOで発展させようと目論んでいました。公開で議論し世界の誰もが利用できるように、誰でもが入りたいと言ったら拒否できないNPOを作りました。ソシノフはソーシャル・イノベーションの略です。ソシノフはサービス事業の主体ではなく、規格や理念作成の主体です。

梅村 NPOを作ったんですね。そこにも補助金が来ていたわけですか。

小松 1円も金は来てません。初動資金は私の寄付です。

梅村 来てなかったんですか。そこの運営費というのは、おっしゃってた安房10万人計画の寄付とか亀田総合病院からの寄付で賄うということですか。

小松 というのを予定していたんですけど、会費も(亀田)信介氏が1回払っただけで、他の兄弟2人は事件で一銭も払わないまま辞めてしまいました。

梅村 そうなんですか。

小松 要するに、医系技官の支配から逃れられなかったんです。それと、私益と公益がごっちゃになって区別できていなかった。区別を迫られて躊躇なく私益を取ったということですね。じつは、NPOで構想した枠組みでサッカーチームの寄付を集められないか打診されてびっくりしたことがあります。チームは株式会社で、亀田さんたちが株主だったんです。一般に呼び掛けて集めた寄付を私企業に渡すなどあり得ません。ただ同情すべきは、病院が財務的にひどく苦しいこと。貧すれば鈍するですね。
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