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あなたの悩みにお答えします⑫

食事の制限があります。職場や趣味のまりなどで配られる茶菓子を断れず、っています。どうしたら良いでしょうか?
答える人 佐藤まりさん(50代女性 1型糖尿病)
聞き書き 武田飛呂城・NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会事務局長

 私は色々な活動に関わっていて、お土産やおやつをいただく機会がたくさんあります。その時と場合や、集まりのメンバーに応じて、様々な対応をしています。

 私は、7年前の10月に1型糖尿病と診断されました。1型糖尿病は、膵臓で作られるインスリンが、何らかの原因で作れなくなってしまう病気です。インスリンが作れないと血糖値の高い状態が続いてしまいます。

 振り返ってみれば、5月を過ぎた頃から、だるかったり、寝起きに体が動かなかったりということがありましたが、年齢や暑さのせいだと思い、まさかそれが病気のせいだとは思っていませんでした。

 1型糖尿病の人は、自分で血糖値を測るなどして、毎日数回のインスリン注射やポンプによるインスリン注入を行い、健康な人と同じ位の血糖値になるよう調整します。ですから、特に始めの頃は、何かを食べる時には、常に血糖値のことが気にかかっていました。

 教育入院を経て普段の生活に戻りましたが、最初は味噌汁の味見も怖くて、当時高校生だった子どもにしてもらうほど、食べることに関して自分に厳しく生活していました。血糖値の「高い」「低い」も感覚では全く分からず、家から出るのも怖かったです。

 退院後しばらく仕事に出かけていましたが、区切りのついた時点で退職することにしました。職場では私の送別会を開いてくれて、ケーキが出されました。

 1型糖尿病では、必要な量のインスリンを適切なタイミングで補充できれば良いので、普段は厳格な食事制限の必要はありません。ただ、インスリンは同じ量を打っても日によって効きが変わったり、食べる物によってはコントロールが難しいことがあったり、ちょっと間食は難しいなと思う時があります。また、当時は発症して間もない頃で、食事の時の注射ですら負担に思っていた時期です。ケーキのために追加の注射をするのが嫌で、「1型糖尿病なので食べられません」と断ったのですが、「あなたの送別会なんだから」と先方も引き下がらず押し問答になりました。押し問答が長引き、立場が上の人から「佐藤さん、こういう時はもらっておくものよ」と言われて、渋々従いました。その後ケーキをどうしたのか覚えていないのですが、持ち帰れないので食べたのだと思います。ケーキを用意してもらった気持ちは嬉しかったのですが、間食が難しい時もあるということを分かってもらえたら良かったと思っています。

 その後も、様々な場面でお菓子をいただくことがあります。間食が難しいと思う時は、どうしたら相手に分かってもらえるか考えながら、相手との関係性によって「間食はしないので」「1型糖尿病でインスリン注射しなければいけないので」「今血糖コントロールが悪くて気を引き締めているところなので」など具体的に話すようにしています。さらに「いただけなくてごめんなさい。でも、あなたのお気持ちは十二分にいただきましたから。どうもありがとう」と丁寧にお礼を伝えます。

 会ったばかりとか、親しくはなくてその場限り、というような方の時には、持ち帰って家族に分けたり、自分の食べられるタイミングで食べたり、ということもあります。

 ただ、私の好きな物や、地方の珍しいお土産などの場合には、積極的にいただくことの方が多いかもしれません(笑)。

 折角の厚意をお断りするのは難しいですが、感謝を忘れず具体的に伝えれば分かっていただけると思います。
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