顔や全身のむくみ

投稿者: | 投稿日時: 2009年05月11日 18:15

今回はむくみの第二弾。顔や全身にむくみが現れることもあります。身近な例では、お酒を飲んだ翌日など、覚えがある人もいるでしょう。女性ではホルモンのバランスでむくみが出ることがあります。もちろん、もっと深刻な病気による場合もあります。

そこで、顔や体のむくみの原因はどのように考えられるか、どう対処したらしいのか、などについて、病的なものとそうでないものに分け、参考になる分かりやすいサイトを当方の独断で選びご紹介します。

※むくみは、医学的には「浮腫(ふしゅ)」といいます。


まず、むくみそのものの仕組みは、「足・脚のむくみ」でご説明したのと、大きく変わりません。

要するに、血液やリンパのめぐりがうまくいっていないということ。いったん体の組織に滲み出た血液中の水分が血管に戻りきらなかったり、その水分と同時に滲み出たたんぱく質がきちんとリンパ管に吸収されず、しかも水分をひきつけてしまったり・・・そうした水分が体の組織中にたまってしまう、といった状況です。病的でないむくみの大半は、前者が主な原因です。


【病的でないむくみ】


●病的でないむくみの原因は、基本的に、血流の流れがうまくいっていないと考えます。

●足・脚のむくみの根本原理は、水分が重力にしたがって高いところから低いところへ流れることでした。それと同じように考えて、顔のむくみがもっとも顕著なのは、夜横になって眠って朝起きたとき、ということになります。

●ビールなどアルコールを飲みすぎた翌朝は、むくむことが多いでしょう。アルコールをたくさん飲むと動脈(心臓から全身に向かう血流の血管)が拡張し、その壁から水分が過剰に滲み出し、静脈等で吸収しきれずに余った水分が皮膚の下の組織にたまってしまって、むくみが生じるのです。しかも水分が滲み出すと血液濃度が高くなるために、体はそれを薄めようと自然に水分を欲し(だからお酒を飲むと、水分を取っているのに喉が渇くんですね!)、なおさらむくみやすくなるのです。

●同様に、塩分を多く摂取すると、むくみを引きこします。体の中の塩分(正確にはナトリウムの)濃度が高いと体が「薄めよ」と脳に命令し、水分を過剰に摂取してしまうためです。

●女性では、月経直前1週間前~月経中に、体のむくみを感じる人が多いようです。これは、この時期に分泌される女性ホルモンの一種「黄体ホルモン」が筋肉や細胞を弛緩させ、そのためナトリウムの排泄がスムーズでなくなり、細胞が水分をため込むから。黄体ホルモンの影響は他にもいろいろあり、倦怠感、イライラ、頭痛、眠気、下腹部の痛み、便秘などの障害が出ます。これらは、PMS(月経前症候群・生理前症候群)と言われています。

●妊娠中も同様のむくみが出ます。ただ、その他に高血圧や尿にたんぱくが出るなどの症状があれば、妊娠高血圧症候群の疑いも。

●また、血液のめぐり(血行)という観点から見れば、締め付けすぎる下着や長時間の同じ姿勢もむくみの原因となります。寝不足やストレスも血行不良を引き起こします。

●ちなみに顔の中でも特にまぶたがはれぼったくなり、むくみが出やすいのは、まぶたの皮膚が薄く、たるんでいて余裕があるために、水分がたまりやすいためです。


【病的なむくみ】
※ここでは、概要についてだけご紹介します。詳細あるいは他にも気なる症状があって明らかに病的と思える場合は、「病的なむくみ こんな病気があります」もご参照ください。


●腎臓病、肝臓病、心臓病、血管やリンパ管の障害、脚気、貧血などでも顔や体のむくみがでることがあります。顔のむくみが治らない、顔色が良くない、慢性的に体調が良くないといった場合は、早めに医師に相談してみてください。

●病的なむくみの原因としてもっとも多いのが腎臓病。重症の腎臓病の場合、尿があまり出ず(一日400ml以下)、普通に飲み食いしただけで体に水分がたまってむくみます。ただし、このような腎臓病は、腎不全、あるいは急性糸球体腎炎やネフロ-ゼ症候群などに限られます。最も多い腎臓病である慢性糸球体腎炎では一般にむくみ(浮腫)は見られません。詳しくは後ほど紹介するサイトを参考にしてみてください。

●肝臓の機能が低下するとたんぱく質が合成されず、血液中のたんぱく質の量が不足します。たんぱく質は水分を血管内に引き付ける性質があり、その濃度が低いと体から不要な水分を回収できなくなり、むくみを引き起こすのです。腹水がたまって張る、食欲不振、倦怠感などの症状を伴う場合は、肝硬変に至っているかもしれません。すぐに病院で肝臓を。

●タバコを長年吸い続けているとむくみがでるという話がありますが、これはタバコが直接的にむくみを引き起こすというわけでなく、タバコにより動脈硬化などの血管障害が起きてくるためと考えられます。ある意味より深刻な状況と判断すべきかもしれません。(喫煙者は、その他にも糖尿病や腎臓の機能低下、心臓病などの生活習慣病を合併的に持つことも珍しくありません!)

●最近ではとくに女性に、無理なダイエットや、不適切なサプリメントを使用したことによる栄養失調やホルモンバランスの失調が原因となるむくみが見られることもあります。

●全身のむくみが著しいとき(5キロ以上の体重増加等)、子どもの著しいむくみは、「ネフローゼ症候群」を考える必要があるかもしれません。大量のたんぱく尿が出て、それに伴って血液中のたんぱく質が減少するため、むくみのほか、コレステロールなどの脂質の上昇などが現れます。この症候群には、いろいろな腎疾患が含まれていて、ひとつの疾患ではありません。まず顔や手足に浮腫が認められ、ときに全身浮腫が著しくなり、胸や腹に水がたまる(胸水、腹水)こともあります。尿が出にくくなり、血圧の低下を認めることもあります。原因はさまざまなため、腎臓内科等を受診して調べる必要があります。


以上のように、むくみを侮ることなかれ。体の危険信号かもしれません。


【参考サイト】


むくみ ≪みやけ内科・循環器科≫むくみの仕組みや、病的かどうかの判断ポイント、予防法もわかります。

むくみ(浮腫)の原因や解消法など ≪いたわりどっとねっと≫
病的でないむくみの原因等が1ページにまとまっていて、チェックがしやすいです。

むくみ――むくみは不調のサイン ≪Dr.KENZOの健康医学講座≫
数回に分けて、むくみを引き起こす病気を紹介。腎臓、肝臓、心臓その他いろいろ、病気が気になる方におすすめです。

腎臓病の症状から診断へ:むくみ(浮腫とは) ≪大阪府立急性期総合医療センター腎臓高血圧内科≫むくみ一般の仕組みを説明。ほかのページでも、病的なむくみに一番多い腎臓病について解説しています。

妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症) ≪e-妊娠≫
気になる方は念のためにご確認を。

≪むくみ解消法で全身のむくみを解消≫病的でないむくみの解説のほか、解消する方法が部位ごとにページ別で紹介されています。

病的でないむくみを予防する食べ物 ≪旬の食材・健康レシピ≫ちなみに怪しい健康食品の宣伝ではありません。“食材”の話です。

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