ロハス・メディカルvol.113(2015年2月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年2月号です。


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LOHASMEDICALVIEW表現でもなく、実際によくある話なのです。不自由な身体でやっとのこと窓口へ赴き、昨日異動したばかりの素人同然の担当者の窓口対応で誤った書類を渡され、病院で診断書を有料で作成し、散々時間をかけた挙句振り出しに戻される場面を、私は何度となく経験しました。 この方がそのニーズを満たす福祉サービスを受けられるようになるまでには、この先も同様にいくつもの手続きが待ち構えています。 日本の福祉は、その言葉とは裏腹で、全く親切とは言えません。すべてが申請主義であり、申請しなければ目の前のことでも全く対応せず、横のものを縦にもしようとしないのが当たり前でした。困り事があっても、情報を教えてもらえなければ申請はおろか相談することもできません。 そうした意味では、中核地域生活支援センターにおけるワンストップの総合相談は、まさに画期的な事業でした。しかし、残念ながら10年前は県と市町との連携も希薄であり、市町の福祉課には中核センター発足についてほとんど何の連絡や説明もないままでしたので、市の担当者に挨拶しても「何者?」といった怪訝な扱いばかりでしたし、「24時間対応なんでしょ! しつこい電話の夜間対応をお願いします」といった依頼ばかりが来ていました。 それでも、24時間の総合相談をワンストップで受ける意義は、至る所に存在していました。 ひだまりは専門機関ではありませんので、職員はコーディネーターと呼ばれ、様々な困り事・心配事の相談をワンストップで受け止め、適切な機関や事業所に振り分けることが主な業務のはずですが、法律通りに困り事は起こりません。 障害認定を受けていない精神疾患や発達障害・高次脳機能障害などによる家族への暴力やご近所トラブル、内縁関係のDVや、虐待の家族内連鎖、負債を抱え生活保護の措置を受けられない家族、18歳過ぎて児童相談所が対応しなくなった虐待ケースなど、縦割りの法制度では対応しきれないケースや、制度の狭間に落ち込んだグレーゾーンの人たちなど、振り分けられない事例がいくつも溢れていました。 私の最も尊敬するソーシャルワーカー(SW)の働き方も、今にして思えばワンストップ相談でした。<事例3> 彼は、小さな町役場のケースワーカーで、今は民間の特別養護老人ホームの施設長をされています。小さな町でしたので福祉課は少人数で、障害も児童も老人も生活保護も何から何まで、彼が対応していました。そして、相談のあった方すべてを本当によく知っていて、心から心配していました。 事例1のケースとは真逆で、年度末の予算のない時に、介護ベッドや、福祉用具の相談が来た時は必ずすぐ訪問してご本人の現状を確認し、必要であれば3日以内にはベッドを搬入していました。「今年はもう予算ないでしょ」と訊いても、「補正できなけりゃ、来年の予算に回すよ。必要なんだから」といつも笑って応えてくれました。 亀田グループでは、医療事業を中心とした街づくりを様々な角度から試行しています。その中でも、ワンストップ相談は、重要な意味を持っています。太陽会安房地域医療センターでは、看護学生の寮に併設される高齢者住宅「フローレンスガーデン」を準備中です。画期的な意味そして標準化へ28LOHASMEDICAL


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