ロハス・メディカルvol.117(2015年6月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2015年6月号です。


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免疫機能の亢進糖尿病の予防・改善血圧の低下骨密度の増大がん発症率の低下やせるという点です。 藤井教授と同じ研究チームの眞鍋康子准教授は、「骨格筋から生理活性を持つ多くの物質が分泌されていることは確実です。しかし、それらは骨格筋以外からも分泌されるものが多く、骨格筋から出た物質が本当に他の臓器にも働いているのか確かめるには、もう少し時間が必要です」と話します。 マイオカインかもしれないと考えられている物質には、運動刺激によって分泌されるものも、ただ筋肉があるだけで分泌されるものもあるそうです。 眞鍋准教授は、このうち運動刺激性のマイオカイン解明に、次のような手順で挑んでいます。まず、骨格筋細胞を電気刺激で収縮させ、その前※眞鍋准教授執筆の「内分泌器官としての骨格筋」(『実験医学』2014年6月号)より未知だが何かある後で濃度変化のあったタンパク質を多数同定しました。次にショウジョウバエで、そのタンパク質の設計図である遺伝子を潰した(KOと言います)ところ、生理的に通常と大きな変化の出るタンパク質がいくつか見つかりました。それらについて、現在マウスで同様にKOしたり逆に過剰発現させたりして観察しています。もし何か生理変化が出たら、そのタンパク質は骨格筋以外にも働くマイオカインの可能性が高いです。 既に結果の出ているショウジョウバエ段階では、骨格筋にしか発現しない遺伝子を操作したはずなのに、驚くことに寿命が長くなったり短くなったりしたものもあったそうです。 ちなみに、デンマークの疫学研究で、大腿部が太い(筋肉が多い)人ほど余命は長いという報告が出ており、また、がん悪液質のモデルマウスで筋肉消失を防いだら余命が延びたという論文も出ています。 骨格筋とマイオカインの可能性は、とてつもなく大きいのかもしれません。同じ適正体重維持でも、食事制限だけで達成するのと、運動して筋肉を使いながら達成するのとの間には、天地ほどの差があると考えた方がよさそうです。 隠れたマイオカインの全貌が明らかになる日を楽しみに、その恩恵にあずかるべく運動してみませんか?


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