ロハス・メディカルvol.126(2016年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年3月号です。


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第55回どい・ゆうこ●1978年北海道医療大学薬学部卒。病院勤務後、93年(株)アインファーマシーズ入社、薬剤師研修を担当、2013年より現職。神戸薬科大学非常勤講師、北海道大学非常勤講師として、「薬剤師教育指導論」や「リスクマネージメント」を教えている。MBA取得後、2015年4月より経営学博士課程に進学。例です。 今回の決定で、平成29年から平成33年までに「スイッチOTC薬」を世帯で1年間に1万2千円を超えて購入した場合、8万8千円を限度にその購入金額を総所得から控除することになりました。 「スイッチOTC薬の控除」と従来の「医療費控除」を両方とも適応することはできません。国としては、スイッチOTC薬を今より普及させ、医療費削減の一助としたいとの狙いがあると考えられます。しかし課題も見えてきました。 一つは、スイッチOTC薬の存在が広く世間に知られて月に決まった平成28年度の税制改正大綱に「スイッチOTC薬の所得控除創設」が含まれていました。 「OTC薬」は、処方箋なしに薬局やドラッグストアーなどで買うことができる医薬品を指します。「スイッチ」とは、元々は病院やクリニックから処方箋を受けなければ手に入らなかったものが、安全性・有効性から見て処方箋なしで使用することができると判断され、OTCに切り替えられたことを指します。花粉症治療薬の「アレグラFX」や、痛み止めの「ロキソニンS」が、「スイッチOTC薬」の代表(株)アインファーマシーズ上席執行役員土居由有子いないことです。包装の箱にもレシートにも記載されていませんので、一般の人には判別がつかないでしょう。レシートに明記されていないので、確定申告時の集計も困難です。 もう一つは、健康保険が効かない分、処方薬より患者の自己負担が高くなるという点です。加えて、医療機関受診の時間や手間を省けるという利点に関しても、2013年に発売された中性脂肪異常改善薬の「エパデールT」などでは、妙なことになっています。何しろ健康診断などで指摘された中性脂肪のデータを持って医療機関を受診してかスイッチ薬国の思惑や、いかに12らでないと買えません。受診して、なおかつ処方を受けないというのは、よほどのことでないでしょうか。さらに薬局で今度は「セルフチェックシート」という問診を受ける必要があります。薬局の側も、メーカー主催の講義を受けた「エパデール販売認定薬剤師」でないと売ることができません。こんなことになってしまったのは、生活習慣病薬で初めての「スイッチ」として注目を集め、医師会、厚生労働省、メーカー、薬剤師会と様々な方面から注文が付いたためです。 しかも、これだけガチガチに条件を付けたとしても、OTC薬で、安全性に関して処方薬と同様の情報提供が行われるかは怪しいという問題も残ります。 国は「スイッチOTC薬」で何をしたいのか、一貫した方針がないようにも見え、その分だけ国民一人ひとりが考える必要はあるのでしょう。LOHASMEDICALVOICE14


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