ロハス・メディカルvol.126(2016年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年3月号です。


>> P.17

関して15年ほど前までは大学の医局が実質的に人材派遣機能を担っていました。医局長や教授が、適性やそれぞれの事情をきちんと見極めて、カツカツの人繰りをしていたものです。 その時と現在と、どちらが医療機関にとってありがたかったかを考えても、派遣を禁止することでチームの質が担保される、というのは全く根拠のない話ではないでしょうか。むしろ紹介側にも応分の責任を果たさせる方が、チームの質は担保されると思います。 現行法制上も、6カ月以内に直接雇用に移行するという前提なら派遣を受けることは可能になっているのですが、あくまで派遣は「原則禁止」であり、「派遣」という言葉のイメージも悪いためか、派遣でも構わないと登録するような人は普通いません。実態としては、最初から紹介に頼るしかないのです。ています。 禁止の理由は、「適正な医療の提供のため、専門職であるチームの構成員が互いの能力や治療方針などを把握し合い、十分な意思疎通の下に業務を遂行することが不可欠なので、派遣労働者では支障が生じかねない」ということだそうです。 これ、何もしなくてもスタッフが充足するなら、そういう発想にも一理あるかと思います。しかし現実には、紹介を受けないと人員定数が充足せず、そして変な人が紹介されてくることで、チーム医療にむしろ支障が出ているのです。 この発想の背景には「直接雇用」=「責任を持つ人材」、「派遣」=「責任をとらない人材」という、20年くらい前の古臭い思想が横たわっています。 昔に戻れと言うつもりはありませんし戻すこともできませんけれど、そもそも医師に 全体の質を担保するためには、少し余るくらい有資格者が存在するようにして、変な人は現場で患者さんと接することのないようにしておくべきです。しかし現在の日本でそれを望むのは、ないものねだりです。紹介でいくつもの医療機関を転々としている中に一定の割合で変な人はいる、という前提で考える必要があります。 変な人が紹介されてきて雇ってしまった場合、解雇とか再紹介とかのコストがかかるため、大して戦力にならない人のために戦力になる人の何倍も人件費を払うのと同じことになります。 医療機関の収入は公定価格の診療報酬に依存しており、そんな所に費用を使うような想定で値決めされていません。本来であれば医療の質を高めたり、働いているスタッフの待遇を改善したりするのに使われるべき費用を、人材紹介業者に横取りされているようなものです。 必要な費用を横取りされているのは患者さんにも不利益ですし、もっと言えば患者さんが変な人と遭遇しリスクにさらされる可能性すらあるということです。 労働者保護は大切なことです。しかし今や医療の有資格者に限れば圧倒的な売り手市場で、「派遣」だからといって意に染まない場所で意に染まない条件で働かされ、搾取されるような状況にはありません。 派遣でお互いに「お試し」して、相性が良かったら直接雇用に移行するという形態をメインの流れとするのが、公益にかなうのではないでしょうか。何よりも患者さんにとっての利益が大きいと思います。 読者の皆さんにも考えていただければ幸いです。業者にも質への関与をLOHASMEDICALVIEW17


<< | < | > | >>