ロハス・メディカルvol.126(2016年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年3月号です。


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LOHASMEDICALVIEW厚労省が骨なし処分にすることで、供給を維持することができました。しかし、地震などで4社の工場のどれかが出荷不能となった時には確実に供給が足りなくなります。 地震でなくても、例えば国内でデング熱の大流行などが起きた場合には、先ほど説明したリスクがある関係上、献血受け入れそのものがストップする可能性も考えられます。そして血小板製剤は有効期限が採血から4日間しかないため、4日間献血受け入れが止まるだけで在庫がゼロになってしまうのです。血小板製剤を必要とする人は生死の境にいるようなことが多いため、確実に生命の危険に直結します。 こう見てくると、現在のカツカツ・ガチガチの構造を前提にする限り、国内自給の国策は安定供給との相性が極めて悪いと言わざるを得ません。 理論上、各社が原料をもっと多く備蓄できるようにすれば安定性は上がりますけれど、その費用を誰がどう負担するのかとか、今でさえ献血者が不足しているのに余計な原料をどこから確保するのかといった問題があり、現実的とは言えないでしょう。 もし国内に何かトラブルがあったら、外国メーカーからの輸入でしのぐしかないとのは、図を見ても明らかです。 とは言え、「国内自給」を国策としている関係上、普段は外国メーカーをどちらかと言えば冷遇しています。困った時だけ頼るというのは、ムシの良い話にも思えます。必要量を売ってもらえるという保証はありません。平常時から良好な関係を築いて流れの中に取り込んでおいた方が、イザという時の安定性は増すはずです。 海外との関係は、一方的に買うばかりとも限りません。 タスクフォースの議事概要6行の中には「国際展開などグローバルな観点からの検討が必要。」と書かれていました。 前回も説明したように、血液製剤の輸出は実質的に禁じられています。血漿分画製剤は連産され、すべての成分が一定の割合で取り出せてしまうため、国内の血漿分画製剤メーカーには売れ残って廃棄している半製品が大量にあると考えられます。元が善意の献血で、世界を見れば血漿分画製剤が全然足りないという国はたくさんある(2013年11月号参照。ロハス・メディカルのWEBサイトで電子書籍を読めます)のに、実に勿体ない話です。出来た製品すべてを残さず売れる海外メーカーに対して、国内メーカーが価格競争力で劣る原因の一つにもなっています。輸出を解禁すれば、このムダは減っていくでしょうし、原料血漿を海外メーカーに預けて製剤化して戻してもらうというバイパスも出来ます。 こうして見てくると、血液を国から出しも入れもしないというのは、様々な面で国益を損なってはいないでしょうか? ただし「国内自給」は法に明記されており、変更するなら法改正が必要です。化血研問題に社会の関心が集まり、タスクフォースも設けられた今を逃すと、法改正の可能性にまで踏み込んだ議論の機会は当分ないでしょう。 結論が出る前に社会が関心を失えば、恐らく何も変わりません。つまり、これは私たち自身が考え、意思表示しなければならない問題なのです。ゼロベースで再検討を輸出禁止は国益に反する問題は、社会の関心が続くか21


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