ロハス・メディカルvol.126(2016年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年3月号です。


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※2 ワクチンには他に、病原体の出す毒素(トキシン)の毒性をなくして免疫に覚えさせるトキソイドというタイプもあります。われるのが、病原体のうち免疫が覚えるのに必要な部分だけ入れる不活化ワクチンです。病原体を分解する場合と、その部分だけを大腸菌などに遺伝子組換で作らせる場合とあります。DPT-IPV(ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオ)4種混合やインフルエンザ、肺炎球菌、日本脳炎、B型肝炎などが代表的です。 その病気そのものを発病するリスクはほぼ0%である一方、体内で増えず免疫への刺激が足りないので、通常は何回も接種する必要があります。また、体内に滞留させて免疫との接触時間を増やしたり、別に免疫を刺激したりするための成分が加えられます。この免疫の反応を高めるために加えられる成分をアジュバントと言います。 アジュバントとして日本で一般に使われているのは、アルミニウム塩(リン酸アルミニウムや塩化アルミニウム、LOHASMEDICALVIEW水酸化アルミニウムなど)で、その安全性は使用実績から証明されていると考えられています。また、免疫システムの理解が進むにつれ、アジュバントになる可能性を持つ様々な物質が知られるようになり、実際、HPVワクチンなどでは使われています(接種者たちに現れた症状を副反応と主張する人たちの多くは、主にアジュバント成分への懸念を示しています)。※2 以上のような話と安全性を高めるための関係者の努力が分かってみると、自然に感染した方がちゃんと免疫は付くから予防接種なんか要らないという主張は、有効性は1 00%に限りなく近いけれど安全性が極めて低いワクチンを事前の問診もなしに選ぶと言っているのに等しいこと、ご理解いただけるでしょう。正気の沙汰では、ありません。 この事情があるため、厚生労働省は化血研のワクチンを出荷停止にできなかったのだとも言えます。けしからんメーカーかもしれませんけれど、安全性の確かめられているワクチンの出荷を止めると、もっと危ない「自然」というメーカーが本物の病原体を供給してしまうのです。 そして今、自然がムンプスウイルスの大量供給を始めようとしています。私たちは、どうするべきでしょうか? 日本のムンプスワクチンは無菌性髄膜炎の発症率が想定より高いという難点、MMR禍の時から基本的に変わっていません。ただし、承認書と違う製造手順だったというスキャンダルのせいで冷静に評価できなくなってしまいましたが、自然罹患に比べれば安全性はケタ違いに高いのです。そして、その有効性は高いことが知られています。 一方、世界各国では、もっと無菌性髄膜炎の発症率は低いワクチン株が使われています。その株を含むMMR混合ワクチンを化血研が導入して2003年に薬事承認申請したまま宙ぶらりんになっていること、以前の記事でも紹介しました(2013年10月号参照。『ロハス・メディカル』WEBで電子書籍を読めます)。ただこの株は、安全な代わりに効果が持続せず、集団免疫に穴が開いて流行を完全には防げないという難点を指摘されています。 ワクチンを広く接種するのかしないのか、するとしたらどのワクチンを選ぶのか、その費用をどうするのかなどなど、絶対にこれが正しいという解はないので、専門家の助言をもらいつつ、最終的な落とし所は社会的に合意する必要があります。皆さんは、いかがお考えでしょうか? 風疹の場合は話が違います。 2004年の流行の際に専門家から緊急提言があったの24ムンプスどうする風疹は三度目の正直


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