ロハス・メディカルvol.126(2016年3月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年3月号です。


>> P.30

こまむら・かずお●循環器内科医。兵庫医大非常勤講師、横浜市大客員教授。過去に国立循環器病センター研究所室長、兵庫医療大教授など。律神経失調症」の病名をお聞きになったことのある方は多いだろうと想像する。健康保険が適用されている。体調不良でクリニックを受診したら、この病名を付けられたという方もいらっしゃるだろう。 この「自律神経失調症」、実は医学的に正式な病名ではない。「まずまず健康」「うつ病」「神経症」「心身症」「不安障害」などで、めまい、耳鳴り、胸部重圧感、動悸、息切れ、発汗、冷感、便秘、下痢、嚥下困難などの「自律神経症状」がある場合を一括りにしている。 こうした自覚の強い患者さんが「自律神経失調症」と診断されると、「わざわざ時間を作って受診したのに、なんだかよく分からない」「ごまかされた感じがする」「とりあえず安心した」という感想を抱き、そしてすぐには良くならない。 自律神経を整えることで健康になる、老化を防ぐ、痩せるなどの健康関連情報が、後を絶たない。ストレスがかかると交感神経の活性が上がり、副交感神経の活性を凌駕してアンバランスになって良くない。だから副交感神経を大事にしないといけないという。 言われれば、その通りに思える。では交感神経はいつでも悪者で、ない方がよいのか。もちろんそんなことはない。必要だからこそ、人間を含む動物には交感と副交感の2種類の自律神経が存在している。動物は天敵と出合った時に死に者狂いで闘うか逃げるかするが、この時に交感神経はフル稼働して、脈拍・血圧・心機能・呼吸機能を最大化して体力を極限にまで高める。それができなければ死である。オリンピック選手も、交感神経がフル稼働しなければ、メダルは取れない。 自律神経は無意識下に、生体を外的環境内的環境に対し最適化するように、各種臓器活動をコントロールする。だから刻々とその活性とバランスが変わるのが自然だ。いつもじっと静かに止まっていて、交感も副交感も均等になっているわけではない。我々はこのようにしてストレスに適応し、ストレスに慣れ、逆にストレスをコントロールできる体質になる。 しかしストレスではなく薬物が、そのバランスを崩してしまうことがある。厚生労働省が委託して運営している「あやしいヤクブツ連絡ネット」を見ると、例えば、発売中止になった抗肥満薬と同じ成分が減量用サプリメントから見つかったという事例が出ている。この成分が交感神経と同じ働きをして、高血圧そして頻脈や不整脈あるいは心不全を起こしたという。 自律神経のバランスに気をつけて日常を送れるものなら、確かに素晴らしい。だがそれ以前に、今食べている健康食品、飲んでいるサプリメント、クリニックでキチンと処方してもらったはずの薬が、自律神経に何か影響を与えていないか、もう一度自分でよく調べてみることは、もっと役に立つかもしれない。第3回怪しいビョウメイ怪しいヤクブツ駒村和雄LOHASMEDICALVOICE「自30


<< | < | > | >>