ロハス・メディカルvol.127(2016年4月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年4月号です。


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 肉類(脂身以外)やレバー、カツオやマグロなどの魚には、セロトニンの合成に必須の栄養素であるビタミンB6も多く含まれています。前回触れた通り、トリプトファンからセロトニンが作られ、そこからメラトニンが作られるので、ビタミンB6も一緒に摂れるのは非常に好都合です。 「ただし、これらのタンパク質を多く含む食品だけ摂取しても逆効果になります」と、甲南大学知能情報学部の前田多章准教授(医学博士)は釘を刺します。 「トリプトファン以外の様々なアミノ酸も豊富に含まれているため、競合し合って輸送経路に〝渋滞〟が起きてしまい、トリプトファンが脳内へ運ばれにくくなってしまうからです」 この問題をクリアするため前田准教授の勧めるのが、一緒に炭水化物(糖質)も摂ることです。 「血糖値が上がると血中にインスリンがたくさん分泌されて、他のアミノ酸を筋肉などに取り込ませます。渋滞が解消される一方、トリプトファンはあまり影響を受けないので、脳へしっかり送られます」 糖質の摂り過ぎは肥満や高血糖につながり、近頃は盛んに低糖質食のメリットが強調されていますけれど、快眠のためには適量摂取が大事というわけです。 また、体内でも合成されるアミノ酸であるグリシンは、「生体リズムを整え、睡眠を改善する効果が確認されています」と前田准教授。「エビやホタテなどの魚介類にも多く含まれ、トリプトファンとは別の過程で脳内に送り込まれます」 トリプトファンだけしっかり摂る方法として、サプリメントを利用するのが手っ取り早いように思う方もいることでしょう。しかし、お勧めできません。 1989年に米国で、トリプトファンを含有する特定のサプリメントを使用した人々に、筋肉痛や発疹を伴う好酸球増加筋肉痛症候群(EMS)が大規模に発生しました。米国食品医薬品局(FDA)にただし現在でも、トリプトファンを含むサプリメントは、特段の規制もなく国内外で流通しています。 なお米国では、最終的に入眠を促してくれるメラトニン自体もサプリメントとして売られています。日本でも「個人輸入」という建前のネット通販で、ごく簡単に手に入ります。しかしこちらも、大量に摂取した場合には意識障害などの中毒症状をひき起こす可能性があります。 また、セロトニン分泌に作用するセント・ジョーンズワート(西洋オトギリソウ)というハーブも、国内ではサプリメントとして広く流通していますが、他の薬と相互作用する可能性について厚労省が注意喚起しています。セロトニン症候群と呼ばれる精神・神経系の副作用が現れる可能性も指摘されています。よると、被害1500件以上、死者37名以上と記録されています。 当時は、サプリメントの何が原因だったのかはっきりしませんでしたが、2005年になって、トリプトファンの体内代謝にEMSを起こす可能性があることを明らかにした研究論文が発表されました。7サプリは要注意


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