ロハス・メディカルvol.127(2016年4月号)

患者と医療従事者の自律をサポートする月刊情報誌『ロハス・メディカル』の2016年4月号です。


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側のタイプ(D体)のアミノ酸が蓄積されると分かっています。なぜ進化の過程でL体だけが作られるようになったのかは興味深い話ですが、いまだ明解な答えは得られていません。 この光学異性体のことは、高校の化学や生物で学習します。特別に難しい内容ではありません。かたつむりの殻の渦や朝顔のつるなどにも右回りと左回りがあるように、生物界には右と左との違いが多々あります。関連する本をご紹介しておきますので、興味のある方はぜひご覧になってください。 さて、L体、D体という言い方は、アミノ酸のようにC(不斉炭素)がある構造には使いやすい用語ですが、単純な構造ばかりではありません。それ以外の光学異性体では、一般的にR体、S体という用語で区別されています。 薬にも光学異性体があります。今やジェネリックが多数作られているレボフロキサシンがその代表例です。 レボフロキサシンは抗菌薬です。細菌のDNA複製を阻害することで薬効を発揮しています。実はこの薬、その前に販売されていたオフロキサシンと同じ分子式なのです。オフロキサシンはR体とS体とが混ざった状態(ラセミ体と言います)でしたが、レボフロキサシンはS体だけなのです。 当初の技術では、R体とS体が同じ割合で混ざってしまです。これによって、眠気が改善され、少ない服用量で効き目が増したのです。 冒頭でお話した抗アレルギー薬も、その方が以前飲まれていたのはラセミ体で、新しく出た薬はそのR体だったのです。具体的に薬の一般名を言いますと、セチリジンとレボセチリジンでした。一般名を見れば、関連があることはすぐに分かりますね。しかし、商品名は全く異なる名前だったので、その方は不安になってしまったのです。R体はヒスタミン受容体に作用しやすいため、服薬量が半分で済むようになりました。 患者さんの中には、医薬品の一般名は分かりにくいと言う方もいらっしゃるのですが、一般名だからこそ薬のことが理解しやすいこともあります。 また、薬が変わった時に不安になってしまう方は、お薬手帳を見せて、何が変わったのか薬剤師に説明を求めてみるとよいでしょう。既存の薬を改良したようなものであると分かれば、落ち着いて服薬していただけるのではないかと思います。LOHASMEDICALVIEW毎回、本文と関係のある本をご紹介していきます。HENRIBRUNNER著 柳井浩訳丸善出版 2013年塚﨑朝子著講談社 2013年もっと知りたい方に右?左?のふしぎ新薬に挑んだ日本人科学者たち世界の患者を救った創薬の物語い、片方だけ大量に生産することはできませんでした。しかし、オフロキサシンで薬効を発揮しているのはS体であること、R体は薬効がなく眠気をひき起こしていることが分かったため、研究を重ねてS体だけ選択的に量産するようになったの25薬にも光学異性体一般名から薬を理解する


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