ロハス・メディカルvol.135(2016年12月号)

ロハス・メディカル2016年12月号です。リン酸探検隊パン花粉症の舌下免疫療法、睡眠と性差、頭を使って空腹の時はトレーニングを、有酸素運動と血管内皮の機能の関係、カルシウムサプリの心臓への悪影響、予防接種って何なの3、オプジーボの光と影7など


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いている血管の構造を思い出してください。血管の内膜の一番内側、血液と接している層を血管内皮と呼び、それを構成している細胞を血管内皮細胞と言います(図)。 この血管内皮は、少々の傷みなら自己修復します。しかし、傷みが自己修復能力を上回ると、どんどん傷が蓄積してしまいます。 そして血管内皮細胞は、単に血液の通り道を形作っているだけでなく、多くの機能を持っています。動脈硬化との関係で重要な機能が、様々な物質を産生・放出して、血管壁の収縮や弛緩を調節したり、血管壁への免疫細胞(炎症を起こす)の接着に関与したりしていることです。 血管が収縮すると、血管を内側から圧迫する力である血圧は高くなり、血管壁も傷みやすくなります。収縮させる働きを持つ「血管収縮因子」の代表例が、エンドセリンという物質です。このエンドセリンの産生は、有酸素運動によって低下することが、学会報告されています。 一方、血管が弛緩すると、血管は傷みにくくなります。その働きを持つ「血管拡張因子」の代表例が一酸化窒素(NO)です。NOは、血管内皮のすぐ外側の層を構成している血管平滑筋を緩める働きがあります。 このNOの働きを利用しているのが、狭心症の発作薬であるニトログリセリンです。体内でNOに変換され、その血管を緩める作用で症状を改善します。 実はタバコの煙や排気ガスにも、NOは多く含まれています。そういえば、大気汚染物質として「窒素酸化物」って聞いたことありますよね。汚染物質として扱われることからも分かるように、もしNOが大量に血中にあったら害です。しかし、「薬と同じで、量や状況によって毒にも薬にもなるのでしょう」と説明するのは、循環器専門医でもある大東文化大学スポーツ・健康科学部の太田眞教授です。 「あるいはNOによる適度な細胞へのストレスが、細胞保護や修復へのスイッチになるのかもしれません。筋肉に適度な負荷を与えてダメージ修復と共に筋肉を増強させる筋トレと同じです」 このNOの産生を促すのが、有酸素運動です。「脈拍が上がり、血流量が増加して、血管内皮細胞が刺激されることで、NOが産生・放出されると見られます」と太田教授は説明します。血管内皮細胞から放出されたNOが血管を弛緩外膜内膜中膜血管を広げたり縮めたりする層血管平滑筋で構成血管の内側にある一層の細胞一酸化窒素血管壁血管内血管内皮細胞NONONONONONO


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