ロハス・メディカルvol.141(2017年6月号)

ロハス・メディカル2017年6月号です。「口から人生を豊かに」3回目は、歯痛の原因です。武井典子氏voice。新連載「健康情報しらべ隊」スタート。分煙では受動喫煙を防げない。梅村聡氏と井上清成氏の対談。記者が当事者になって気づいたことほか。


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LOHASMEDICALVIEW 薬を余らせて他人にあげる、なんていうのは人類全体に対する犯罪行為と言ってもいいくらいです。 相手に合った狭域の抗生物質を選んだ方がよい理由は、耐性菌の発生確率を少なくするためと同時に、腸内細菌を損なわないためでもあります。 私たちの腸内には何百兆個もの細菌が棲みついており、外部から侵入してきた細菌と闘ってくれます。また、免疫系などにも色々な影響を与えています。 広域の抗生物質を使うと、それらの腸内細菌を一掃することになってしまいます。腸内細菌のバランスが悪い人はあえて抗生物質で一度全滅させてから良い菌を飲むという治療法があるくらいです。元々は体と腸内細菌叢との相互作用がうまくいっていたという場合、変な腸内細菌が増えてしまって健康を害するということになりかねません。 この菌同士で競争させるという発想は極めて重要で、薬剤耐性を持っている菌は、道具を余計に持っているようなものなので、その道具が必要でない環境下だと必ずしも生存競争で勝ち残るとは限りません。とにかく余計な菌は殺さないのが一番です。 その点で日本の大きな問題は、世界的に見ても突出して広域の薬が使われていることです。広域の薬は大抵値段も高いので、色々な意味で問題です。 なお、意外かもしれない所で近年懸念の高まっているのが、畜産や養殖漁業で病気の予防と発育促進の目的から抗生物質が使われており、その周辺で薬剤耐性菌が発生しやすくなっていることです。それらの菌は、過熱すれば死滅すると考えられる一方、生食だと体内に取り込んでしまう危険性があります。いわゆる食中毒とは違うかもしれませんが、頭の片隅に置いておいてください。17


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