ロハス・メディカルvol.142(2017年7月号)

ロハス・メディカル2017年7月号です。「口から人生を豊かに」4回目は、喫煙の悪影響。加えて骨も弱くなるようです。品川女子学院の生徒さんたちによるvoice。梅村聡氏の対談相手は、江崎禎英・経産省ヘルスケア産業課長。保険医療に提供格差ほか。


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LOHASMEDICALVIEWいます。梅村 そうですか。江崎 ただ、現状それぞれの医師は専門分野の治療しかしませんから、3つの病院を回ると山のように薬をもらってきます。先日沢山の薬を飲むのがあまりに苦痛で、しばらく薬を飲むのを止めてみたら、かえって体調が良くなったと言っていました。私が見ても明らかに病院相互の連携はなく、大量の薬が処方されている実態は、医療財政以前の問題です。医師の方でデータを共有すれば、もっと合理的な医療ができるはずです。現在かかりつけ薬局にその役割を担わせようとしているようですが、薬剤師の判断で薬を止めさせることはできず、患者がもう一度3時間待ちして医師に相談するなど全く現実的ではありません。梅村 急所を突きますね。厚労省は今、地域包括ケアシステムを推進しているのですが、これは古いと思っています。何でも診られる総合医を作って、24時間電話でも繋いで、何人かの家庭医が連携して対応しよう、夜中も順番に対応しようとしているのです。しかし、そこではITを使って情報共有して相互乗り入れしようという話にはあまりなっていません。今はもうカルテはほぼ全部電子化されているのだから、当然お互いに見るべきだと思います。個人情報保護法の規定で言えば、本人の許可があれば可能ですから。病院では、疾患ごとに患者を振り分けて、医師は自分の専門領域のみを見るスタイルになっています。今後複数の疾患を持つ高齢の患者が増えてくると、複数の医師や医療機関の間で診療データを交換しながら、継続的に1人の患者をフォローする必要が出てきます。梅村 それ、以前から言われているスタイルですが、なかなか進まないですよね。江崎 でも、現在医師会では「かかりつけ医」を推奨しています。極端な専門医志向と9時-5時勤務を望む医師がこれだけ増えてしまった状況においては、1人の患者を1人の医師が24時間365日フォローすることは現実的ではありません。私の実家は無医村なので、昔は遠く離れた診療所の先生1人がすべての医療を担当していました。しかし今ではその実家に住む私の母ですら、眼と膝と胃腸炎で別々の病院のお世話になって江崎 そうですね。梅村 お互いにカルテを見合えば、外の眼が入るじゃないですか。江崎 全くその通りです。その結果、初めてサイエンスとしての医療が始まるのです。梅村 サイエンスになる?江崎 現在の医療は、1万年以上にわたる人類と病気との闘いによって得られた経験の積み上げです。その時代時代の最も頭の良い人たちが、試行錯誤を繰り返し少しずつ延ばしてきた鍾乳石みたいなものだと思います。その意味で、医療とは技能(アート)の伝承です。近年になってこれに科学(サイエンス)的な説明が加えられただけで、基本的に技能であることに変わりはありません。実際医療現場では、可能性のある複数の選択肢をトライしてそれでだめなら諦めるというもので、多くの患者を治療しても、医師個人の経験の積み上げによる技量の向上という形でしか活か心配しているうちに船そのものが沈む23


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