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福島県立大野病院事件第二回公判

 この調書は、弁護側が証拠採用に同意しなかったものなので、K医師は調書の内容と同じことを話す必要はない。しかし供述内容が被告人有利に変わるとすれば、上のやりとりの後だけに裁判官に与える心象は良くない。この事件に関して医学界の検察包囲網が敷かれ、真っ当な立証は困難になりつつある中<医師たちがよってたかって加藤医師をかばっている>と裁判官に思わせ一発逆転を狙う、こんな検察の青写真が垣間見える。弁護側もその狙いを察知して急に忙しくなる。

  検察 証人は当時、クーパーを用いた剥離が推奨されているという認識はなかったということで良いですか?
  K医師 ・・・。
  弁護人異議 調書では証人に文献はあるかないか聴いて、ないと答えただけなのに、それが認識はなかったまで広がっている。
  K医師 私はクーパーを用いた経験がないということです。
  検察 証人の当時の認識として、クーパーの使用が根拠を持たない、または推奨されない理由として、
  弁護人異議 だから、そういう訊き方はですね、
  検察 証人は剥離に、クーパーが、
  K医師 クーパーを私は切るように使うと思った。しかし、クーパーの使い方は色々ある。そぐように使うか、安全性の確認された狭い範囲を切ることは考えられます。
  検察 当時、クーパーを剥離に使うという認識があったかをお聞きしています。いかがですか。
  K医師 ありません。
  検察 当時はそのような、やってみよう、効果的だと思ったことがなかったというのは?
  弁護人異議 色々な使い方があると証人が言っているのに、やってみようと、ひとくくりにされている。証人は実際、剥離が難しい癒着胎盤の経験は1件しかない。
  裁判長 証人が産婦人科医としてどういう認識をもっているかという程度ですよね。異議を棄却します。質問を続けてください。
  検察 なぜクーパーで剥離しようと考えなかったのですか。
  弁護人異議 あらゆる考えていない事につき、その理由を問うても仕方ないじゃないですか。考えるべきかどうかというのは分かりますよ。なぜ考えなかったのか、と聞いても無駄でしょう。
  検察、当時はクーパーを用いた剥離が推奨されていない、許容されていないと。
  弁護人異議 認識が違う。今の質問の中で検察は「許容していない」と使っている。許容されていないなんてことを証人は言っていない。
  検察 その質問をして、答えを得て尋問しています。
  裁判長 証人は許容されていないとは言っていませんね。ここは質問を変えてください。
  検察 証人がクーパーを使ってみようと当時思わなかった理由は?
  K医師 いや、考えてもみなかったということです。
  検察 事前に証人が検察で事情をきかれたことがありましたね。18号証、署名をみてください。この内容についてはご自身で検察官の調書を読んで確認していただいたことがありましたね。裁判長、署名指印部分を証人に示してもよろしいでしょうか。
  弁護人異議 その書証に関しては不同意です。不同意のものを示すのはルール違反です。
  検察 署名指印部分を証人に示すだけです。
  裁判長 どうぞ。
  検察 調書の中には器具の使い方について証人が示されたことが書いてあります。記憶にありますか?
  K医師 ありません。
  検察 では誘導しますが、用手剥離の際には癒着の程度を確認しながら指先で丁寧に剥離する。
  K医師 はい、正しいことですから。
  検察 「癒着している胎盤を不用意に剥離することは危険である。用手の場合は癒着している胎盤を、指先の微妙な感触で確かめながら細心の注意を払って慎重に剥離していく。無理ならその時点で用手剥離を断念しなければならないのです」。この通りですか?
  K医師 はい。
  検察 「従い、器具を使った剥離は危険な行為というほかなく、私には考えられません」。思い出しましたか?
  K医師 はい。しかしその当時はクーパーを使って切るということを想定したため、そのように答えました。
  検察 言葉はその通りで良いですか?切る場合にはどういう認識になりますか?
  K医師 当時の認識ですか? 私は考えたことがありません。
  検察 危険だという抽象的な認識はあったのですか?
  K医師 認識ではなく、考えたことがなかったのです。

 完全な検察側のポイントである。インテリで責任感の強い人ほど、過去の自分の発言を持ち出されると動揺しやすい。見事な尋問テクニックとしか言いようがない。K医師のハンカチで汗をぬぐう回数がどんどん増える。

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