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福島県立大野病院事件第三回公判

(弁護人交代して、しばしやりとりの後、胎盤の写真を示して)
  弁護人 これは卵膜ではありませんか。
  S助産師 はい。
  弁護人 あなたが不完全と言ったのは、どこの部分ですか。
  S助産師 (画像を指差す)
  弁護人 卵膜が途切れなく続いているのは分かりますか。
  S助産師 はい。
  弁護人 あなたがグチャグチャと書いたのは、どこの部分ですか。
  S助産師 (写真を指しながら)普通はツルンとしているものが、カレーの固まったような感じというか。
  弁護人 要するにあなたの「グチャグチャ」というのは、この写真のような状態のことを言うのですね。
  S助産師 はい。
  弁護人 看護記録には「欠損か?」とクエスチョンマークが付いてますね。
  S助産師 はい。
  弁護人 元々なかったとは考えませんでしたか。
  S助産師 少し考えました。
  弁護人 だからクエスチョンマークが付いているのですね。
  S助産師 はい。
  弁護人 胎盤病理の専門家は今回の胎盤を分葉胎盤か膜様胎盤でないかと言っているのですが、そのような胎盤があることを知っていましたか。
  S助産師 その当時は知りませんでした。
  検察官異議 弁護人は不同意鑑定の内容に基づき尋問しています。

 既に弁護側は一度尋問してしまっているのだが、今日は検察も少し気が抜けているのだろうか。

  裁判長 鑑定を持ち出さなくても端的に知っているかどうか尋ねればいい話ですよね。
  弁護人 今は知っているのですか。
  S助産師 はい。
  弁護人 今なら、この胎盤をそうだったと見るかもしれませんか。
  S助産師 私にはちょっと判断できないのですが。

 ひどい話である。子宮も胎盤も警察が押収しており現存しているのである。このような経験の浅い助産師の記録や記憶に頼らずとも現物を鑑定し判断すればよいではないか。尋問に慣れていない関連証人に対して、本来は答えられないような範囲のことまで証言を求め、それを根拠に事件の構図を組み立て心証形成を狙う、まさに「イリュージョンショー」である。ただし当然のことながら、尋問に答えた側にも責任がある。それは後ほど述べる。

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