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医療事故調検討会17


大阪地区の臨床評価医として奥村参考人(大阪大学呼吸器外科教授)
「連絡があると、解剖立会人と臨床評価に適切であると考えられる臨床医を選ぶところから始まる。これが、解剖の時間を決めるのにかなりの障害になっている。特に、大学以外の一般関連施設から見つけるのは非常に難しいので、大学の中から見つけることになる。大阪には5つの医学部があるので、そこから推薦していただいている。
 しかしながら、最も適切な人をうまく探せているかというと、それが後の委員会での審議に多少影響することがあり得る。特にその後に報告書を作成することに関しては、臨床医の解剖立会人が臨床経過に関してかなり細かい報告書を作成するわけで、例えば、これが非常に経過の長い人であると、段ボール箱2つ分のカルテを全部読まないといけないという事例があった。これを、通常業務をやりながらそういう方々がやるというのは、かなり無理がある。その報告書を作るところで非常に時間がかかる。そのために6カ月以内で全部の作業を終えるというのは、最初からうまく運ばないということもある。
 6人か7人の評価委員で評価委員会をする、少なくともそのコアな人たちを同じ時間に集めて会議を開く日程を見つけること自身なかなか難しくて、本来であれば今月評価委員会を開きたいと思っても、それが翌月になったり、さらにその翌月になったりする。
 これまで大阪では19例の経験がある。既に14例においてはすべてが終わっている。前半の7例は、平均で1年4カ月かかった。最近は少し手馴れてきた関係もあるのかと思うが、それでも最近の7例でも平均1年ちょうど。現在進行中のものにおいても、目標である6カ月が達成できるかというと、残念ながらそれは難しい状況だ。遺族から、一周忌までに結果を報告していただいていないという不満の言葉もある。
 評価委員会での議論には、特に難しいケースになると、その時点での標準治療に非常に精通されている先生が必要になるわけで、不幸にしてそういう方がおられない場合には、議論が確信を得たところへなかなかいかないおそれがあり、実際にそれに近いようなこともあった。
 例えば、ある法医の先生などは、十分な議論が煮えきらないままに、ある病名を無理矢理出そうとする。そういうときに、問題になる可能性があると思う。実際にあるケースにおいて、該当病院における調査結果とだいぶ懸け離れた結果が出てしまって、該当する病院のほうはかなりの不満を持ったというようなものも稀にはあり得る。そういうことで、モデル事業と該当する病院独自の調査委員会での情報の共有であるとか、そういうことは十分になされる必要があるだろうと思われる。あまりにインディペンデントにすぎるのはよくないのではないかと考える。
 遺族への報告会の14回のうち13回について遺族はその死因に対して了解・納得されております。さらにその中の半数ぐらい、14例中の5例か6例だったか、非常に感謝するというお言葉をいただいた。その内容もさることながら、調整看護師たちがいろいろな疑問に答えてくれているということと、当該病院に対しては非常にものが言いにくいけれども、中立的な第三者ということで話を持っていきやすいということで、話を聞いてもらいやすいということが役立っていると思われる。
 ただし、1例だけは報告書を受け取ることを拒否されました。これは10年以上の経過を持っている、慢性疾患のエンドステージのような状況での手術で、術後死がモデル事業の対象になった。この症例に関して遺族は解剖に何を求めていたかというと、手術のことではなくて、10年間の長きにわたる診療全般において、何が問題であったかを明らかにしてほしかったということで、モデル事業としては、そこまでのことは言及できなかったということに対して、遺族は非常に不満を持って、最終的には報告書を受け取ることを拒否された。
 いろいろなことがあるが、3分の1の方が非常に感謝してくれて、それまでの医療機関への誤解も解けたという形で理解していただいたということは、それなりの意義があると感じている。調査結果報告の委員会のときに、委員長からの報告の方法も非常に重要だと思う。評価委員長からの事務的な説明というわけではなくて、一字一句きっちりと説明しながら、お悔やみの気持を持って説明することができれば、家族はそういう気持をわかってくれるということは感じる。
 今後、こういう制度を恒久化していくために必要であると思われることは、評価委員の人材確保
とその質の確保。もしいまの現状で何とかしていくことになると、できるだけ事務作業を軽減していただければと思う。例えば、調査報告書を作成する場合にセクレタリー的な仕事をしていただけるような人が恒常的におられればと思う。また今後は、当該病院の調査報告、結果であるとか、そこで得られた資料も参考にするようなチャンスが必要ではないかと思う」
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