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PMDA(医薬品医療機器総合機構)の不思議-特集1「医薬品審査」


 
 海外で使える医薬品が、日本では承認されていないために使えない「ドラッグ・ラグ」という言葉を一般的にも耳にするようになってきた。世界の売上トップ100に入る医薬品が日本で発売されるまでには約4年かかっており、米国より2.5年遅いとされている。患者団体などから「海外で使える薬がなぜ日本では使えない」と批判の声が上がり、医薬品の審査を扱うPMDAも非難の槍玉にあがった。PMDAで審査や安全対策にかかわる職員は約500人で、FDAの約3000人と比べてと少なく、審査に時間がかかっているとして、国はドラッグ・ラグを2011年度までに2.5年(開発期間1.5年と承認審査期間1.0年)短縮するために、2007年度から3年間の計画で職員の大幅な増員を図るなどの対応策を打ち出した。
 
 
ドラッグ・ラグ.JPG
 
体制強化図.JPG
(資料:PMDA提供)

 
 今年度もPMDAには100人が新規採用されるなど、大幅な増員が図られているものの、単純に職員の数が増えても、個々の審査員の経験やスキルに重点が置かれる審査業務がすぐに効率化されるとは考えにくい。元PMDA審査員で、厚労省で薬系技官として働いたこともある東大大学院薬学系研究科准教授の小野俊介氏は「FDAでも審査員を増員したが、審査スピードを上げることにはつながらなかった。単純に人を増やせば問題が解決すると考えるのはおかしい。多くの人が入れば、経験ある職員が若手を教育するのに時間が割かれる。審査のばらつきを解消する対策として、より低いレベルに合わせざるを得なくなることもある」と指摘する。米国の研究結果によると、FDAでは1971年からの20年間で、審査にかかわる部門の職員が約450人増員したが、審査にかかる期間も延びて20か月から30か月にまで増えていた。
 
 PMDAでも、海外の医薬品規制当局に職員を派遣して研修させ、企業や大学から講師を招くなどして研修体制の強化を図っているものの、どう効果が表れるかは未知数だ。宇山氏は今後の課題として、「国民に納得のいく形でドラッグ・ラグを解消していくには、医薬品の承認審査に何が必要最低限の条件となり、どんなデータが必要になるのか、国民皆で考えていく必要があると思う。そのためにも、承認審査したものがパーフェクトではないと知ってほしい。それを分かりやすく国民に伝えていくことが必要」と話している。
 

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