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回答率が上がると、開業医の報酬が下がる?

中川俊男委員(左).jpg 勤務医と開業医の報酬格差の根拠とされている「医療経済実態調査」について、5月20日の中医協総会で支払い側委員は、「回答率を上げるような努力をぜひお願いしたい」と診療側に求めた。これに対し、診療側の委員は「回収率を上げるのであれば、2号側(診療側)ではなく厚労省にも伝えていただいた方が筋としては正しい」と反論した。(新井裕充)

 「医療経済実態調査」は、診療報酬改定の基礎資料にする目的で中医協が実施するもので、全国の病院や診療所などに調査票を配布し、収支状況や職員の平均給与などを集計する。

 「医療経済実態調査」をめぐっては、診療所の医師(開業医)の年収が病院勤務医よりも高い結果になっているため、日本医師会が同調査の実施時期や手法を批判している。

 日医は、2010年度の診療報酬改定に向けた調査について議論する中で、6月のみを対象としている「単月調査」から「通年調査」に切り替えることを再三にわたり主張してきた。
 その結果、改定年の3月末までに終了した直近の事業年度の損益状況なども集計することで決着。しかし、これが逆に命取りになったとの声もある。

 今回の調査は、従来の「単月調査」に加え、直近の事業年度の損益状況なども集計するため、厚労省の事務的な負担が増える。このため、来年4月の改定後に公表する「本報告」は行わず、今年10月の「速報値」に一本化することになった。つまり、10月のデータを根拠に、開業医の報酬引き下げ(再診料の引き下げなど)に向かう流れも予想される。

 「医療経済実態調査」についてはまた、調査客体を公平に選んでいるかどうかも問題になっている。

4月21日_財政制度等審議会資料.jpg 3月18日の中医協・調査実施小委員会(委員長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、日本医師会常任理事の藤原淳委員が、「厚労省は医療機関の情報をすべて知り得る立場。(調査対象を)公平に抽出されたということが分かるような形をぜひやっていただきたい」と要望した。

 これを受け、同委員長を務める遠藤久夫・中医協会長が調査対象の抽出作業に立ち会い、これを5月20日の中医協総会で報告。「恣意的な抽出は行われていない確信を得た」と説明した。

 このため、「医療経済実態調査」をめぐる今後の焦点は、「有効回答率」に移る。07年6月に実施した「第16回医療経済実態調査」では、病院が57.0%と第15回調査から4.2ポイントの減。一般診療所は同0.2ポイント増加したものの、45.5%と依然として低い回答率にとどまっている。

 5月20日の中医協総会では、支払い側委員が回答率を向上させるよう求めた。遠藤会長の説明と委員の発言要旨は以下の通り。

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