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慢性期医療への「質の評価」導入と、足並み揃わぬ中医協


 ■事務局にとって想定外の委員発言?
 約2年ぶりの開催となったこの日、事務局は前回改定の前にも実施した「2008年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」を既に行ったことを委員に報告。6月中にも開く予定の次回会合に、調査結果を提出するとした。しかし、意外にも委員からこの調査の在り方や内容に対する異論や要望が噴出した。
 
 通常、厚労省の会議資料は事前に委員の目を通されているため、この調査が既に実施され、今回の会合でその報告が行われることは委員も承知していたと思われる。武久洋三委員(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)の「佐々木先生も調査しているということで了解しているが」、三上裕司委員(特定医療法人三上会総合病院東香里病院理事長)の「事前レク」という発言などからも推察できる。
 
 しかし、椎名正樹委員(健康保険組合連合会理事)がこの調査について、「一体どこが発議して、どんな調査なのかが全く分からない」と発言したのを皮切りに、"事後承諾"されるはずの調査の在り方に不満が噴出したかのように見えた。委員からは、「慢性期入院医療」の範囲を療養病床からさらに広げるべきといった発言や、療養病床削減の進行具合を踏まえた検証をすべきといった意見が出た。さらに、武久委員が「この2年間一体何をしていたのか」と発言するなど、診療報酬改定間際になって急きょ開かれたこの分科会の在り方や事務局の考えを質す場面もあった。事務局が敷いた路線に従って粛々と議論するのではなく、慢性期医療を必要とする患者の状況や医療現場の様子を踏まえた上で、制度全体を俯瞰して議論すべきとの意見が多数上がった。
 対する事務局は、調査については診療報酬改定に必要なデータであるため、「例年通り」に実施したとした。
 場をまとめなければいけない池上分科会長は「本日開催されたということは、どうあがいても元に戻らないことですから」と述べ、目前に迫る診療報酬改定のために必要な今後の議事やスケジュールを確認した。その上で、この分科会が担う議論の範囲について、上部組織となる基本問題小委に諮るよう事務局に依頼した。
 
 事務局は会合終了後、記者団に対し、今回の調査は事務局の判断で実施したとした上で、「今日は(分科会としての)キックオフ。今回の調査もいつも通りやっていますというつもりだった。まさかそこが気に入らないと言われるとは思わなかった」と話しており、事務局にとって委員から予想外の発言が出たことをうかがわせる。基本問題小委に諮る方法としても、どのような形が適当かを今後考えていくとした。

 ただ、分科会や調査の在り方についての意見は挙がったものの、「医療の質の評価」については、池上分科会長や椎名委員も関連項目が調査の中に入っているかを事務局に確認するなど、分科会として議論することは前提になっているとみられる。事務局は記者団に対し、質の評価について「しっかりやっていきたい」と述べた。
 
 今回の会議の内容をお届けする。
 
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