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先発品企業が命運を託す「薬価維持特例」(3)―質疑応答


■ 「誤解がある」―庄田社長


[庄田隆・日本製薬工業協会会長(第一三共(株)代表取締役社長)]
 それでは、先程、「薬価維持特例」の範囲の質問があった。陳述の中でも説明したほか、これまでも専門委員が話をしているが、基本的に特許期間中のもの、ならびに再審査期間中のものである。

庄田隆会長r.jpg 私どもの資料の14ページで、山本委員から質問があったが、「グレーの部分」について誤解がある。この「グレーの部分」であっても、特許期間中は後発品はない。特許が終わった後、後発品が出る。競争が激しいので、特許期間中であっても、対象に入ってこないだろうと、そういう意味合いが「グレーの部分」。

 それから、特許期間中に革新性がいかに評価されるかということは陳述でも申し上げた。承認されて薬価収載時にまだ分かっていないような医薬品の価値が医療現場や市場で確認されるものもある。

 例えば、個別の製品名を挙げるのが適切かどうか分からないが、統合失調症の治療薬で「アビリファイ」という製品がある。これは、算定時点では加算が付いていない。

 しかし、この薬剤は世界的にも大きく評価されて、日本のみならず世界的に大きく扱われている薬剤。従って、薬価収載時の加算のみをもって、その医薬品の評価が定まるものではない。このように考えている。

 従って、「薬価維持特例」の範囲についての質問だが、基本的に特許が存在し、後発品がまだない医薬品、さらに再審査期間中のもの、これが原則。

[遠藤部会長]
 はい。ありがとうございます。

[長谷川閑史・日本製薬工業協会副会長(武田薬品工業(株)代表取締役社長)]
 私からは「R&D」についてお答えさせていただく。そもそも私の理解では、薬の価格というものは、リスク・ベネフィットのバランスで、どれだけのベネフィットを既存品と比べて提供できるか、そういったことが主眼になるだろう、判断基準になるだろうと思う。

 この中医協は、産業政策論を論ずる場ではないということは承知しているが、国民皆保険制度の下で、ここで薬価が審議され、ここで厚生労働省と共に薬価が確定されるという意味では、結果として私どもの産業にも影響を与えることは否めない。

 そういうことを念頭に置きながら、ちょっと「R&D」について申し上げたい。

 基本的に私どものような研究・開発型の企業の使命は、医療関係者の皆様方と共に、患者さんのアンメット・メディカル・ニーズにタイムリーに応えること。そして、患者さんのQOLを改善していくこと。その過程において、やはり外国と比べて、遅れることのないようにぜひしたいという強い願望もある。

 外国と比べて遅れることの要因が、われわれ製薬メーカーの力不足であれば、これは自らの責任だし、それで競争に淘汰されることもやむを得ないと思っている。

 しかし、制度上のハンディーで、そういうことが仮にあるとすれば、そこの部分については、ぜひ、ご考慮をお願いしたい。

 具体的に言えば、研究・開発型の企業は、やはり革新的な新薬の創出という自らが得意とする分野にフォーカスし、特許が切れれば、今度はそういった特許切れの製品を患者様に提供することを得意とするジェネリック・メーカーの方に基本的に市場を譲っていく。

 こういう、それぞれが得意な分野に特化することによって、より、医療の中での薬剤のニーズに応えていくということが、最終的な形としてはいいのではないかと思う。

 投下した資本の回収をできるだけ早くすることで、基本的にイノベーションの促進につながると考えている。具体的にどこまでどうなるかということをお示しすることは難しい。特に、私どものような大きな製薬企業にとっては難しいと思う。

 ただ、日本の現状を見ると、バイオベンチャーが極めて少ない。アメリカの場合は、新薬として承認されるほぼ半分はバイオベンチャーがオリジンのものだが、日本では皆無に等しい状況。

 バイオベンチャーの場合は、やはりまだ財務基盤もしっかりしていないので、こういった新しい製品にチャレンジし、商品を出した場合にできるだけ短期に資本を回収して次の投資に向かう、そういう形で成長していくことも必要だし、ひいては、日本における国民の医療ニーズをより満たす方向に行けると思う。

 そういった点を考えると、この「R&D」を、イノベーションをより促進するという方向に、新しい薬価制度は必ず寄与するものと考えている。以上。

[遠藤部会長]
 はい。ちょっと、(日薬連が)お答えする前に、山本委員がいろいろなことを同時におっしゃったので......(会場、笑い)。

 必ずしも、やり取りが正確になっていないかな、というところがある。最初の「薬価維持特例」の範囲については、その通りだと。

 つまり、今のお話を私なりに解釈すれば、要するに「薬価維持特例」の対象となるかどうかは市場に任せるという判断。つまり、「薬価維持特例」は価格を維持するという市場から乖離したような議論に見えるが、実は、その判断を市場に委ねるというのが「薬価維持特例」の考え方のポイントになっている。それがいいかどうかはまた審議するが、そういうお話。

 もう1つ、山本委員がおっしゃったことは、そもそも開発費が掛かっているということが特にファルマの資料に書いてあったという。そこところが、一体どういうことなのかをもうちょっと説明してほしいと、そういう意味合いもあったのではないかと思うが、いかがだろうか? 

[山本委員]
 ありがとうございます。その通りです。(会場、笑い)

[遠藤部会長]
 とすれば、これはファルマの関口さんからお答えいただいた方がいい。特に4ページ。「1個の新薬を開発するのに必要なコストが急増している(2006年は約1300億円)」という話があった。これはどういうことなのかと。この説明をお願いしたい。


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