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救急受け入れ、小規模病院で好成績―中医協・DPC評価分科会

■ 「規模が小さい病院の方が、緊急入院割合が高い」―松田委員
 

[松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)]
松田晋哉委員0608.jpg 前回、相川委員から「救急はどうなっているのか」との指摘があったので、曜日や時間によって分析した。

 ただ、あくまでも研究班にデータを出していただいた施設のみの結果なので、医療課で分析しているような全DPC病院ではない。

 ※ 配布資料は、厚生労働省のホームページで。

【資料8ページ―救急車による緊急入院】
 「救急車による緊急入院」の割合がどれぐらいあるのかを調べた。病床規模が小さい病院の方が、「救急車による緊急入院」の割合が高い。

 個別に見ると、外れ値になるが、70%が「救急車による緊急入院」という病院まで、(DPC)に登録している状況が分かる。

【資料9ページ―救急車による搬送割合】
 搬送割合をパーセンテージで見ると、大学病院とナショナルセンターで低く、病床規模による差はそれ程、大きくはない。

 ※ 「ナショナルセンター」(NC、国立高度専門医療センター)は、(1)国立がんセンター (2)国立循環器病センター(大阪府吹田市) (3)国立精神・神経センター(東京都小平市) (4)国立国際医療センター (5)国立成育医療センター(東京都世田谷区) (6)国立長寿医療センター(愛知県大府市)―の6センター。
 このうち、傘下に2つの病院を持つセンターは、国立がんセンターと国立国際医療センターの2つで、▽国立がんセンター中央病院(東京都同中央区)、国立がんセンター東病院(千葉県柏市) ▽国立国際医療センター戸山病院(東京都新宿区)、国立国際医療センター国府台病院(千葉県市川市)―がある。これら6センター(8病院)は2010年度から独立行政法人化される。

【資料10ページ―救急搬送患者の9900割合】
 救急車で搬送された患者さんについて、入院してからどのような医療行為が行われているのかを、(DPCコードの)「9900」か、「9900以外」かを調べた。

 ※ 「99」は、DPCの手術に対応する手術がないという意味。「00」は、いわゆる定義表に含まれている「手術処置等1・2」が行われていないという意味。

 大学病院では、救急搬送された患者さんの6割に対して、何らかの手術や処置をしている。しかし、規模が小さくなるにつれて、何らかの手術や処置を行った患者さんの割合が少なくなっているという傾向を示している。

 ※ 救急車搬送患者で、1入院中に手術処置を行わなかった9900の割合は、200床未満の施設が最も高い。

【資料11ページ―施設別の9900割合】
 大学病院の場合は、(救急搬送された患者に)何らかの手術や処置をした割合が7割ぐらい。規模が小さくなると、(200床の病院は何らかの手術や処置をした割合が)6割ぐらい。

 先程の例(資料9ページ)で見たように、規模の大きい病院は救急車の搬送割合は少ないが、来た患者さんに対しては、何らかの手術等をやっている割合が高いことを示している。

【資料12ページ―曜日別】
 あまりはっきりしないが、規模が小さくなると若干、若干だが土日の入院が多い傾向がある。

 ただ、大学病院とナショナルセンターで低く、それ以外はあまり差がないと見る方がいいのかもしれない。

【資料13ページ―深夜入院】
 これは、深夜に入院した患者さんの割合を調べたもの。大学病院とナショナルセンターは、深夜に入院した患者さんの割合が低いが、それ以外は2.8%ぐらいで、差がない。

【資料14ページ―深夜入院後48時間以内手術】
 では、深夜に入院した患者さんのうち、48時間以内に何らかの治療を行ったかどうか。人工呼吸、人工腎臓、胆嚢吸引(ドレナージ)などを緊急に行うような集中治療の割合を示した。

 これを見ると、48時間以内にそのような集中治療を行った割合は大学病院が多く、規模が小さくなるにつれて割合が低くなる。

 まとめると、大学病院とナショナルセンターでは、深夜に入院した患者さんの割合が低いが、大学病院では、48時間以内に集中治療等を行った患者さんの割合が高いことを示している。

 次(資料15ページ)も同じような傾向。
 ※ 深夜に入院した患者のうち、1入院中に手術処置を行わなかった割合は、病床規模の小さい病院とナショナルセンターが高い。

【資料16ページ―人工呼吸日数】
 ナショナルセンターと特定機能病院では、人工呼吸をやるような重症の患者さんが集中治療室に入っていることを示している。17ページ(救命救急入院管理料)も同じような傾向。

【資料18ページ―土日祝祭日入院患者数と割合】
 ここからは今までと毛色の違うデータで、説明を少し細かくやりたい。「救命救急入院料」を算定している施設のうち、土日祝祭日の入院患者数と、その割合を調べた。(表の)1本1本の線が各施設。

 上が、「救命救急入院料」を算定している施設で、下は算定していない施設。青(色の線)が土曜日、薄い青が金曜日。

 これによると、(救命救急入院料を)算定している施設の方が、(土日祝祭日の入院)患者数が非常に多い。何曜日に入院しているのかを見ると、算定しているかどうかで差はない。

【資料19ページ―土日祝祭日入院患者数と割合】
 これは、(土日祝祭日に入院した)患者さんの割合を各種の統計を使って分析したもの。これを見ると、土日祝祭日に入院している患者さんの割合は、(救命救急入院料を)算定しているかどうかによって差がないという結果を示している。

【資料20ページ―深夜入院患者数と割合】
 深夜に入院した患者数と割合を示したもの。上が、「救命救急入院料」を算定している施設で、下は算定していない施設。これを見ると、算定している病院は確かに、深夜に入院した患者数が多い。

 しかし、割合で見ると、(救命救急入院料を)算定しているかどうかによって差がない。

【資料21ページ―深夜入院患者数と割合】
 これは、(深夜入院患者数と割合を)各種の統計を使って分析したもの。(救命救急入院料を)算定していない病院で、深夜入院患者の割合が高い結果になっているが、(データの)数の問題があるので、平均で見ると大きな差はない。

【資料22ページ―時間外入院患者数と割合】
 これを見ると、(救命救急入院料を)算定している病院は時間外の入院患者数が多い。しかし、次のページを見ると......。

【資料23ページ―時間外入院患者数と割合】
 これは、(救命救急入院料を)算定していない病院で、75%帯よりも多い病院が多いためにこのような結果になってしまうと思うが、算定していない病院の方が時間外の入院患者数が多いという結果になっている。

【資料24ページ―48時間以内の集中治療患者数】
 深夜に入院した患者さんのうち、48時間以内に集中治療をやったかどうかについて、(救命救急入院料を)算定している施設別に調べた。

 救命救急入院料を算定している施設で、48時間以内に集中治療をしている割合が高いことが分かる。

【資料25ページ―48時間以内の集中治療患者数】
 統計学的にも有意の差が出ており、救命救急入院料を算定している施設では、深夜に入院した患者さんのうち、48時間以内に集中治療をやったか割合が高い結果になっている。

【資料26ページ―時間外受診患者の48時間以内集中治療】
 時間外に受診した患者さんについて、同様の分析をした。

 救命救急入院料を算定している施設の方が、時間外に受診した患者さんに対して、48時間以内に集中治療をしている割合が高いという結果が出ている。

【資料27ページ―時間外受診患者の48時間以内集中治療】
 統計学的に分析すると、救命救急入院料を算定している施設の方が、時間外に受診した患者さんに対して、48時間以内に集中治療行為をした割合が高い。

 以下(資料28~31ページ―時間外受診患者の48時間以内手術)も同じような結果になっているので割愛する。

【総括】
 (全体を)一言でまとめて言うと、確かに数で見ると、どちらと言うと、規模の小さい病院の方が深夜帯や土日の患者さんの割合が高いが、その中で、実際に48時間以内に何らかの手術等を行ったかという観点で見ると、逆に特定機能病院(大学病院)など、規模の大きい病院で、そういう患者さんを受け入れているという実態が明らかになった。

 また、救命救急入院料を算定しているかどうかは、患者さんの割合で見ると大きな差はないが、行われた医療行為の密度は、算定している施設の方がより侵襲的な医療行為が行われているという結果が、この分析で得られた。

 以上、研究班で分析した結果の説明を終わりたい。

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