文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

新型インフル 蔓延したら白血病治療止まる


――不活化しないと、新型インフルエンザそのものも輸血を介して感染する可能性がありますね。

 インフルエンザが輸血を介して感染するというエビデンスはありません。しかし、感染している可能性があれば献血しないでくださいという現在の対応だと、壊滅的に献血の減る可能性があります。不活化すれば、疑わしい人からも献血を受けられるので、非常事態には意味が大きいと思います。

――政府は新型インフルエンザの第二波以降は、ハイリスク群の被害を最小化するんだと言ってます。だとしたら、備えておくべきように思えますね。

 何らかの緊急措置を取った場合でも、導入するには月単位の時間が必要です。秋以降の第二波に備えるつもりならば、すぐ検討を始めた方がよいと思います。

――でも実際には何も動いていない。国会質問もあったのに。どうも、血液製剤の加熱・非加熱と同じで薬害の構図のように見えて仕方ないのですが。

 そうですね。対応する技術があって、それを導入しないことによる危険性はあらかじめ分かっていたわけですから、死者が出れば、不作為で誰か逮捕されるでしょうね。

 でも白状すると、兵庫の件が報道されるまで、私自身も血液専門医でありながら、この問題に気づいていませんでした。反省も込めてなんですが、現場の臨床医が今まで関心なさ過ぎで行動しなさ過ぎたと思います。治療ができなくなって一番困るのは患者さんですから、傍にいる臨床医が代弁して声を挙げないといけません。

 どうも現場の臨床医はおとなしいというか、難しい問題は偉い先生方や厚生労働省が何とかしてくれるだろうと考えがちです。意見が分かれるような社会的な問題には関わりたくないというメンタリティがあります。

 少なくとも、このままだとこういう危険があるけど、どうするか議論しようよと社会に呼びかける責任はあると思います。今回の問題も、パンデミックの時は白血病の患者さんが亡くなるのを容認しようと社会全体で決めるなら仕方ない話ですし、不活化による薬害が起きるかもしれないけれど緊急に導入して白血病患者さんを救おうというのも選択です。その議論すらされてないというのが大問題だと思います。

 1  |  2  | 3 |  4 
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス