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救急搬送・受け入れルール策定し、地域医療にPDCA機能を-開出英之消防庁救急企画室長インタビュー


■地方交付税、「機能」に応じた支援を
 
--総務省のことについてもお聞きします。今年度から、医師不足などで経営が厳しい過疎地の公立病院や、産科、小児科、救急医療部門を備えた公立病院を運営する自治体向けの地方交付税が拡充されますね。これまで、「病床数100床未満、平均外来患者数200人未満」が「150床未満」に変わるなど、要件が色々と緩和されました。最初に聞いた時は、そこまで変わるかなとも感じたのですが、どの程度医療機関に影響していくと見ておられますか。
 
 昨年度の2930億円から、約700億円程度の増額となっています。「産科、小児、救急」が対象となっていますが、この半分ほどが救急医療機関にいくとみられています。特に大きいのは、これまでこの措置は日赤や済生会、厚生連といった「公的医療機関」に対するものだったのです。それが今回、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、特例民法法人などが設置する病院も対象にするというように変わりました。また、経営が厳しい地域の有床診療所で地域医療に重要な役割を果たしているものも対象になります。補助を受けられる医療機関の幅が広がりますよ。
 
--先日のガイドライン策定合同検討会では、消防庁の岡本保長官から医療機関の「設立母体」による補助ではなくて、救急医療など、地域で医療機関が果たしている「機能」に応じた支援を考えていくという方向も示されましたね。「公立」病院を主管する総務省としては思い切ったことになるのではないでしょうか。
 
 ドラスティックな方向だとは思いますが、やはり「公的」とか「民間」という考えではなくて、地域で医療機関が果たす役割や機能として見ていくということは大切だと思いますので、今後はそういう要素も加味していく方向になると思います。実際のところ、医療機関には多くの補助金が出ています。しかし、「名ばかり告示」のような問題もありますよね。実態に応じた支援が大事だと思います。その意味でも、この新しい協議会が受け入れ実態の調査や分析をしていくということが重要な意味を持ってきます。
 
 
■今後の「評価」につながるデータに
 
--今後の医療機関に対する「評価」の指標にもつながるということでしょうか。救命救急センターが毎年充実度評価を受けているように。
 
 どう取り入れるか分かりませんが、こういう場で実績が出ていけばそうなるかもしれませんし、そういうデータになるのが望ましいと思います。ただ、救急は実績に応じた評価というものが馴染まないものですよね。空けて待っているということが大事ですから。患者を受け入れてなくても、地域の安全に役立っているということを評価すべきです。
 
--評価手法が大事ですね。東京都のスーパー総合周産期センターでも、それができたことで、地域の病院が「いざとなったらスーパーがある」と安心できているため、搬送が少なくて済んでいると聞いています。
 
 診療報酬は患者さんの処置に対する出来高で評価するものですから、診療報酬でみるというのは難しい話です。だから政策医療として、受入れがゼロだったとしても、それでもベッドや人件費などに関する"待機料"が補てんされることが大事ですが、それには税金しか有効なものはないでしょう。実績評価は難しいですがうまくそこを評価して財政支援するようにしないと難しいというところにきていると思います。
 今回の法改正で重要なのは、救急搬送に関して今までなかったPDCAサイクルを機能させるということです。まず実態を出して議論して、それに応じた改善をする。その流れを作ることです。それがこうした政策医療にかかわる医療体制の充実につながっていくと思います。
 
 
 
(略歴)
1986年 東大法学部卒業後、旧自治省入省
2006年 総務省消防庁広域応援対策官
07年 救急企画室長
 
 
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