文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「コスト調査」という名の医療費抑制ツール

■ 「多数参加できるよう簡素化の方法を検討したい」 ─ 田中分科会長
 

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 それでは、委員の皆様がご着席なので、ただ今より「第139回中央社会保険医療協議会・診療報酬基本問題小委員会」を開催する。本日は、小林麻理委員(早稲田大大学院公共経営研究科教授)がご欠席です。

 それでは、議事に入らせていただく。本日は、「医療機関のコスト調査分科会からの報告」を議題とする。診療報酬調査専門組織・コスト調査分科会の田中分科会長より、ご説明をお願いしたい。よろしくお願いいたします。

[田中滋分科会長(慶應義塾大大学院経営管理研究科教授)]
 コスト調査分科会の田中でございます。お手元の(資料)「中医協 診─2」に基づいて説明させていただく。「医療機関の部門別収支に関する調査」結果に関する報告です。始めに、(平成20年度・医療機関の部門別収支に関する調査報告)1ページをご覧ください。

1. 調査の目的
 平成15年度から19年度にかけて、医療機関の部門別収支に関する調査研究を実施してきた。病院の医業経営の実態を診療科別ですね、診療科別に把握するために計算手法の確立、検証を行うことが任務だった。一応、確立したと思われたので、平成20年度では、その計算手法を用いて試行的に調査を実施した。

2. 調査の対象
 調査の対象としては、主に一般病床で構成されるDPC対象病院、DPC準備病院のうち、レセプトデータをレセプト電算処理フォーマットで提供できる病院または準備病院のうち、「DPC導入の影響評価に係る調査」のEファイル、いわゆる「診療明細情報ファイル」ですね、これを提供できる病院を対象とした。

3. 調査の種類
 調査の種類だが、昨年度(平成19年度)までの調査研究と同様に、「一般原価調査」と「特殊原価調査」の2種類の調査を行った。「一般原価調査」とは、病院における診療科別の収支を算定するための調査であります。

 また、「特殊原価調査」とは、病院での手術、検査、画像診断などの「中央診療部門」における費用を各診療科に割り振るための係数、これを「等価係数」と呼んでいるが、この「等価係数」を作成するための調査で、たくさんの病院ではなく、大変細かいデータになるので、一部の病院にご協力をお願いした。

(1) 一般原価調査
 それぞれの調査の対象病院数(190施設)と、その中で実際に計算を終了できた病院数(127施設)......、手を挙げたが途中で諦めてしまった病院もあるので、最終的に計算を終了できた病院数(集計対象施設数)は、1ページに記載されている通り(127のDPC病院)。(中略)63病院が途中で辞退したことは、ちょっと覚えておいていただきたい。

(2) 特殊原価調査
 また、「等価係数」(を用いた特殊原価調査)は、14病院のデータを集計して作成した。

4. 開設者・病床規模等
 これら集計対象施設の開設者別、DPC対象か準備かの別、病床規模別の内訳は、「一般原価調査」については2ページ、「特殊原価調査」については3ページに載っている通り。
 次、4ページ(調査内容)をご覧いただきたい。(中略。調査結果について約10分間にわたり説明)

  7月10日のコスト調査分科会の模様を3回にわたってお伝えしました。詳しくは以下をご覧ください(アクセスが多い記事は②です)。
   ① 調査結果 → 「眼科」「外科」「産婦人科」は黒字 ─ 診療科の収支を改定に反映か
   ② 委員の反応 → 診療科の収支調査、狙いは医師人件費の実態把握?
   ③ 今後の方針 → 医師の給与、コスト調査で切り下げか ─ 中医協分科会

 以上が今年度の結果です。(7月10日に)コスト調査分科会を開いたところ、私たちの意見としては、この調査結果について、調査研究の開発当初、平成15年度のころに比べると、かなり精度が高くなったと思っている。

 それから、この調査は入院と外来を分けて見るよりは、診療科別に見ることに力点を置いており、入院・外来別で見た方が統計の読み方としては、より意味があると思っている。

 なお、調査に最後まで参加できた医療施設には急性期医療を中心とした大規模病院が多く、中小規模病院、慢性期の病院が少ないという意見が出された。以上が調査結果の報告です。

 併せて、医療機関の部門別収支に関する今後の方針について、私どもの考えていることをこの委員会に報告する。(資料)「中医協 診─1─3」(医療機関の部門別収支に関する調査の今後の方針案)をご覧いただきたい。

 「平成20年度・医療機関の部門別収支に関する調査の結果は、平成19年度までの研究での結果と概ね同様の傾向を示すなど、調査結果も安定しており、「精度の高い調査となった」と評価することができると思っている。

 ただし、これまでの取り組みにおいて、先ほど申し上げたように、190病院のうち63病院が途中で辞退したことに表れているように、調査客体となり得る医療機関が結果的にDPC対象病院、準備病院に限られている。

 また、調査項目によっては、普段の業務では取っていないデータを本調査のためにわざわざ別途取っていただくなど、調査客体となる医療機関の負担が大きい といった課題が生じていることが分かった。

 そこで、私どもコスト調査分科会は、この基本問題小委員会でご了承いただけるならば、平成21年度においては、平成20年度調査に参加した医療機関(190施設)を対象に、本調査における負担や問題点等を調査し、その結果を参考に、この精緻にできあがった調査を基に、調査が簡素化できるかどうか、多くの病院が最後までできるか、多数の病院が使えるかどうか、簡素化の方法の検討を実施したいと考えている。

 以上が、医療機関の部門別収支に関する今後の調査の方針案でございます。ご報告は以上でございます。

[遠藤委員長]
 はい、どうもありがとうございました。非常に詳細な、かつ精緻な分析をしていただいた。1つはそのご報告、また、それを反映して今後の新しい提案を併記されたということ。

 平成19年度に、同様の調査結果をご報告いただき、基本問題小委員会で議論していただいたが、その時にさまざまな意見が出た。主として、この調査はあくまでも調査手法の開発であって、代表性があるとは必ずしも言えないので、調査の結果そのものは、どれほど代表性があるかどうかは、はっきり言えない。あくまでも分析の方法を考えているんだということで、20年度も調査が行われたということ。

 従って、同じような調査方法でまた新たにご報告をいただいたということ。その後のご提案だが、やはり精緻な調査であるがゆえに、なかなか(医療機関の)負担がかかると。(調査)数を増やすことができないので、「いつまで経っても代表性がない」という状態になるので、「どこまで簡素化できるかという調査を21年度はやりたい」ということがご提案。

 そうなると当然、それ以降は簡素化された調査で、それこそ「代表性が保てるような調査」を行うということになると思うが、その第一歩ということで21年度の提案が出された。

 今回の20年度調査結果の内容についてのご質問でも結構でございますし......、まず、そちら(診療側)からいきましょうか? 藤原委員、どうぞ。

 ▼ 今回の調査結果を「代表性がない」と判断するかどうかは、中医協で全く議論していない。まるで、次期改定では使わないことが既にどこかで決まったかのような発言。使わないことが望ましいが、少なくともDPC病院については使える調査ということが分科会の総意だったはずだが......。慢性期については、「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直己・慶大医学部教授)の調査に委ねることを考えると、調査対象を広げるとしても、せいぜい「DPCを導入していない急性期病院」ぐらい。とすると、何らかの事前調整で、今回の調査を使わないことに決まったと推察される。病院団体が反対したのかもしれない。最も重要な部分が密室で決まるのはいつものことだが。

 【目次】
 P2 → 「多数参加できるよう簡素化の方法を検討したい」 ─ 田中分科会長
 P3 → 「配賦によって外来と入院のニュアンスも変わってくる」 ─ 藤原委員
 P4 → 「まだ早い。とりあえず手法としては確立したという段階」 ─ 西澤委員
 P5 → 「自由診療が入っていると、非常に影響が大きい」 ─ 対馬委員
 P6 → 「途中経過ぐらいは、お示しいただきたい」 ─ 山本委員
 P7 → 「簡素化によって、精度が阻害されるか」 ─ 牛丸委員


  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス