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診療報酬の"裏技"を告発する病院団体

■ 「知れ渡ってしまうとDPCの根幹が揺らぐ」 ─ 小山分科会長代理
 

[厚労省保険局医療課・長谷川学課長補佐]
 事務局(保険局医療課)の説明は以上でございます。

[西岡清分科会長(横浜市立みなと赤十字病院長)]
 はい、ありがとうございました。ただ今のご説明について、議論を行いたいと思います。ご質問、コメント、ございますか。(隣席の小山分科会長代理が進行方法について助言している様子)
 じゃ、まず、1つずついきますか......。

[小山信彌分科会長代理(東邦大医療センター大森病院心臓血管外科部長)]
 まず、1番の再転棟から......。

[西岡分科会長]
 分かりました。じゃ、ご提案によりまして、1つずつ、項目でまいります。最初は、再入院・再転棟でございますが、これに関しまして、ご意見はございますでしょうか。はい、どうぞ。

 ▼ 再入院については、前回改定で「3日以内の再入院を1入院」とするルール変更を行っており、ヒアリングを実施しなかった。次期改定に向け、委員の関心は再入院から再転棟に移っている模様。

[小山分科会長代理(東邦大医療センター大森病院)]
 ケアミックスの病院は、何が問題なのか。何が一番、こういうようなこと(再転棟)をさせているかと言うと、1つは慢性療養病床に入っている患者さんが一般病棟に戻る場合に、戻った日から換算して3日間遡って出来高になるんですよね。
 これをあまり利用されてしまうと、本来のDPCが駄目になっちゃうので、提案ですけれども、もし、出来高にするんじゃなくて、DPC病棟に転棟するなら、3日間の算定を出来高ではなくてDPC算定にするということが必要なのかな。これがいろいろな所に知れ渡ってしまうと、全部そうなっちゃうので、DPCそのものの根幹が揺らいでしまうような感じがしたんですけれども。
 (他の委員ら、驚いたような表情でざわつく。厚労省の担当者らも慌てている様子)

[西岡分科会長]
 これは......、事務局(保険局医療課)......、どういう決まりになっておるんでしょうか。ちょっと、ご説明をお願いします。 (他の委員から、「それは知らなかった」などとつぶやく声が漏れる)

[医療課・長谷川補佐]
 すいません、実は(転棟)3日前までの入院に関しては、私ども、まだ確認できていないんですが、一応、3日前までの間は、『入院基本料E』(750点)という療養病床の(包括)点数ですが、『一番低い点数を算定することができる』という記載になっておりまして、ちょっと確認させていただければと思っております。

[小山分科会長代理(東邦大医療センター大森病院)]
 そうなってなければいいんですけどね......。(しばらく沈黙。委員らは相談中)

 ▼ 療養病棟の包括点数よりも高い点が取れるような"裏技"がなければいいとの指摘。

[西岡分科会長]
 これ、実際の、あの......、ケアミックスで請求されている形は......、急性期病棟に移られた時には、どういう請求になっているんですか? 美原先生、何か......。

[美原盤委員(財団法人美原記念病院院長)]
 うちはですね、回復期系リハビリ病棟から急性期病棟に入院するケースというのは、ごくごくまれなんですね。この間(のヒアリングで)もお話ししたように、よほど、本当の急性期という意味でないとやっていないので......。

 だから恐らく......、詳しい保険点数の請求上の問題は分かりませんが、例えば、回復期リハビリ病棟の方(患者)が、心原性脳塞栓症を再発したというケースがあります。そうした場合にはその日からDPCになっているんだろうなーと理解していましたけれども。

 ただ、その割合というのは、うちは再転棟率が0.7%なんです。これは一般病院から見ると......。これ、データをもう一度見直したんですが、一般病院の0.05とか0.1に比べると多少大きいかなという印象は持ったんですが、そこの中のある3か月間を見たら、たった3例なんです。それは全部、脳梗塞とか脳出血の再発でしかないんですね。ですから、(ヒアリング対象となった病院のような)肺炎等々の(転棟)はなかったのが事実です。

 ▼ 美原氏は前回のDPCヒアリングから委員として参加している。自院の素晴らしさをひけらかすような発言が目立つ。大病院を優遇するような意見が多い同分科会で、ようやく中小病院の立場を代弁する委員が参加したかに思われたが、そうではなかった。中小病院を規制するようなトーンの発言が多く、他の委員は彼の発言をうなずきながら聞いている。厚労省にとって使いやすい"御用医療者"がまた1人増えた。

[西岡分科会長]
 どうぞ、齊藤委員。

[齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)]
 前に、短い期間で再入院することが(入院期間の)リセットに利用されるというので、3日以内でしたっけ、「再入院を一連の入院とみなす」ということで切り抜けようとしたわけですよね。
 今度、転棟で3日以内......、再転棟したようなものの取り扱いはリセットになる? 今の制度では?

[医療課・長谷川補佐]
 その点については、リセットになりません。

 ▼ 2008年度の診療報酬改定では、同一疾患での3日以内の再入院(病棟間の転棟に伴う再転棟も含む)を「1入院」として扱うよう算定ルールが見直された。DPCは、入院初期の診療報酬が高く、入院期間が長くなるにつれて階段状に低くなるように設定されているため、「早期退院を促す経済的なインセンティブが働く」といわれる。しかし、短期間で退院させても、空いたベッドを埋める入院患者がいなければ空床の状態が続いてしまうため、医療機関は難しいベッドコントロールに頭を悩ませる。それを解決する方法の1つとして、「リセット再入院」が利用された。「リセット再入院」とは、完全に治癒していなくとも、いったん退院させて再び入院させることにより入院期間の起算日を振り出しに戻すこと。

[齊藤委員(社会保険中央総合病院)]
 「一連の入院」とみなされるわけですね、転棟であってもね、なるほど......。そうすると......、今の問題はどういうことになるんですか。その......、「転棟を利用してリセットが頻繁に行われると具合が悪いな」ということがあるのか......。それはないんですか?

 ▼ 「リセット再入院」はすべてのDPC病院で使える手法だが、「再転棟」の場合は同一施設内に慢性期病床があるケアミックス病院に特有の手法であるため、同分科会の委員らは「リセット再転棟=ケアミックス病院」という意味で問題視しているように見えるが、誤解もあるようだ。

[小山分科会長代理(東邦大医療センター大森病院)]
 いや、そうじゃなくて......。ちょっと僕も慢性期は専門じゃないんで、いろいろ(病院団体の幹部から)話を聞いてみましたら、(例えば)慢性期療養病床に紹介で入院しますよね、そうすると慢性期の(包括)点数ですよね。んで、急性期だったら、いわゆる「亜急性期」だとすると、DPCに予定入院しますよね。

 これはそれでいいんですが、慢性期療養病床に入っている患者さんが急変したので「一般病床」に戻すときの得点として、転棟した日から遡って3日間は出来高で算定できるというふうに読みとれるような保険制度になっているんです。それは僕の勘違いかな? (厚労省の担当者ら、慌てて調べている)

 ▼ 中小病院が加盟する病院団体の幹部からの入れ知恵らしい。しかし、これでは警察犬と一緒ではないか。医療機関に有利な解釈を厚労省にぶつけたり、医療現場の改善につながるような政策を提言したりするのが病院団体の役割ではなかったか。医療現場には診療報酬点数表に記載されていない多くの"奉仕活動"があるのだから、特定の点数の要件を広めに解釈して採算を合わせることも時には必要だろう。それなのに、現場を規制する方向で病院団体が機能しているのはとても奇妙な気がする。

[医療課・長谷川補佐]
 恐れ入ります。実はあの......、先生ご指摘の点ですが、次回までに、ちょっと、ある程度調べさせていただければと思います。特に、回復期リハビリテーション、療養型病床等々、あと認知症もありますが、それらの転棟に関しまして支払上、何らかの問題がないかどうかですね、ちょっと確認させていただければと思います。後日、ご報告いたします。

[西岡分科会長]
 じゃ、次回にでも、ご報告をお願いします。ちょっと、複雑で......、たぶん我々自身も知らなかったポイントだと思います。(委員からも「知らなかった」との声。以下、他の議論に論点がそれるため中略)

[保険局医療課・宇都宮啓企画官(老健課長併任)]
 もともと、この話(再転棟)は、資料1ページの再入院で始まっている。つまり、(入院初期は)点数が高くて、(その後の点数が)階段状になっていますから、低くなる時にいったん退院させて、もう1回再入院させて(点数が)高い状態をキープする。それが不適切だということで、最初は再入院の調査が行われた。

 これについては、先生方にルールをつくっていただいて、「3日以内の場合は一連の入院とする」ということにしたわけですが、ケアミックスがたくさん(DPCに)入ってきたということで、退院ではなくて転棟という形で同じようなことが行われているのではないかというのがそもそもの発想だったと思います。

 どういう患者を受け入れるか受け入れないかというよりは、まず、最初の趣旨としては、(再入院と)同じような......、何と言うんですかね......、要は、「高い点数のみを維持するようなことが行われていないか」というのが本来の趣旨で、こう調べたところでありますけれども、実際に調べてみると、それとはまた違ったタイプのあまり適切ではない事例が出てきた。

 ただ、昨年も再転棟を調べて、そのときに......、その後の(中医協)基本問題小委でしたか、中医協の西澤委員(全日本病院協会会長)もおっしゃっていましたけども、実際、再転棟を繰り返している割合というのは実は非常に少ないんですよね。ただ、「一部、ちょっと目立つところがあって」というところなので......。

 私が言うのもおかしいかもしれないが、客観的にデータを見ると、ケアミックスの病院がみな、これをやっているという感じではないので、ただ、一部不適切な例が出ているようなので、また、「それに対してどういうルールづくりが必要なのか」とかですね、そういう防止策について検討しようという趣旨だということをご理解いただきたいと思います。

 ▼ 宇都宮企画官は、中小病院が加盟する「全日本病院協会」(西澤寛俊会長)に気を遣っているのか、ケアミックス病院に対して同分科会の委員ほどナーバスになっていない気がする。

[西岡分科会長]
 よろしい......でしょうか......。それじゃ、次の問題に移ります。(以下略)
 
 
 
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