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新型インフル 議論そのものを公開 足立政務官ヒヤリング


 足立
「20代から50代に関する臨床試験の中間報告では健康な成人は1回で有効という可能性が出てきたということだが、それは結論として妥当か」

 岩田
「科学的にはその通りだと思う。むしろ考えるべきは現場にアプライするか。理論値と実際値が必ずしも一致しないのは歴史が教える真実。炭疽菌テロの時、郵便配達人が不安になってCDCに問い合わせた。CDCは『菌が洩れ出すことはあり得ない』と答えた。実際には5人が感染して2人亡くなった。SARSの時、2メートル離れたら感染しないと言われていた。しかし高層ビルの上から下まで感染するということが起きた。あとで排水管を通じて広がったと分かった。

 新興再興感染症に対しては常に謙虚な姿勢で、現実を受け止め方針転換することを担保しておく必要がある。抗体価が上がったということが即免疫によるプロテクションを保証するものではない。抗体価の上昇は吉報だがギャランティではない。

 1回打ちがいけないとは思わない。ただ今の段階で1回と2回が同等とは言えないし、1回で十分とも言えない。そのようなことは比較試験しないと言えない。金曜日の会議がどのような議論をしたのか知らないが、そのメッセージが報道に乗った時に1回で大丈夫という流れ方をしたことが問題だ。これまでも朝、新聞の1面で厚生労働省の方針を読まされることが多かった。それが私たちが意見交換会に呼ばれる前日だったりする。それで意見を聴かせてくれと言われてもバカにされているのかと思った。そのような出来レースのような報道が多い。リークしているのか、スッパ抜いているのか知らないが、きちんとしたスポークスマンを置いて、報道が既成事実化してなし崩し的に物事が決まっていくのはやめるべきだ。それはフェアではない。

 1回打ちの議論をするには何人に接種するのかの議論が欠かせない。ちょうど政権も代わったことだし、国民全員に打つんだという方向に今こそ転換すべきでないか。国民全員に行き渡らせることにすれば1回か2回かという議論は消滅する。幸い多くのワクチンは4週間よりもっと間があいてもブースト効果にはそれほど差がない。まず1回打ってみて、2回打つかどうかは今後のデータを見ながら決めてもよいのでないか。ノアの方舟のように誰を乗せるのかという議論をするのではなくて、東京駅のタクシーのように順番は待つけれど最終的に全員乗れるというのがよいのでないか。

 麻疹は生ワクチンを使っているので理論的には1回で十分と理論家たちは皆言う。しかし実際には効果が不十分だということで欧米では20年も前から2回打ちにして根絶した。一方で日本は理論に固執して方針転換が大幅に遅れた。それが未だに麻疹を根絶できてない理由の一つでもある。素直に1回より2回の方がよかったんじゃないかと認められれば状況は違った。今回のメッセージの出し方は再検討の必要がある」

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