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妊婦の救急搬送、東京消防庁で助産師が行うコーディネートとは?


■東京消防庁の中に助産師を設置、一般救急との連携も
 都の搬送コーディネーターは、従来の周産期医療ネットワークの中で行われていた転院搬送の調整と、一般からの119番通報による搬送調整の二つを、消防庁内のコーディネーターが担っているために連携を取りやすいという特徴がある。都福祉保健局の担当者は「救急に関する他の情報もここで一元的に管理されているので、119番通報があった時に周産期の案件だった場合、コーディネーターの助産師がいるので連携できるのはいいこと。一つのところに情報が集まってくるので、やり取りにもスピード感があり、機動力がある」と話す。
 
 各自治体のコーディネーターを見てみると、大阪府や千葉県では病院に、札幌市では医師会にそれぞれ配置されている。東京都の搬送コーディネーターの場合、東京消防庁の建物内で119番通報を受ける他の職員と机を並べて業務を行っている。このため、119番通報を受けた時に周産期に関わる案件だった場合は、救急隊とのやり取りをコーディネーターの助産師も同時に聞くことができる。また、同じ部屋にいると救急搬送に関する情報も耳に入ってくるため、産科が入っている病院の置かれている状況も分かり、一般の救急と連携した対応が可能になるということだ。
  
 加えて、東京都では一般救急に関する搬送コーディネーターも同じ8月31日からスタートしており、こちらは救急救命士の経験がある職員が担っている。助産師のコーディネーターは救急救命士のコーディネーターと席が隣。医療機関や消防機関とコーディネーターとのやり取りはお互いに耳に入ってきそうだ。
 
■東京都は周産期と一般救急が連携しやすい体制

 ただ、こうした連携が可能になるのは、東京都の消防機関の管轄体制が他の自治体とは違うという特徴があり、大規模な指令システムを備えているからだ。
 都の場合、他の自治体のように市町村単位の消防機関による指令系統ではなく、東久留米市と稲城市、島しょ地区を除いてすべての情報が東京消防庁に入ってくるという大規模な管轄体制で、東京消防庁に置かれているコンピューターシステムもそれに対応した規模のものだ。一部地域を除いた産科救急医療機関の情報も東京消防庁に一括されていることになるので、産科開業医と救急隊がそれぞれ現場で行っていた選定作業を、消防機関にいる助産師コーディネーターが担うという、周産期と一般救急を連携させた搬送体制が可能になる。「こんなことができるのは、この規模のシステムを持っている東京都だからだと思う」と話す都の関係者もおり、都独自のコーディネーター設置体制と言えるだろう。
  
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