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今さら、やっと、PMDA全職員に匿名アンケート 薬害肝炎検討会

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第17回会合が29日開かれた。医薬品行政を検証するとの旗印を掲げて開始されてから1年半、終結まで半年のこの時期になってようやく、審査や安全対策を行なっているPMDA(医薬品医療機器総合機構)職員の生の声を知りたい、と匿名アンケートが行なわれることになった。(川口恭)

 このアンケートを行うかどうかで丁々発止のやりとりが繰り広げられたので簡単に再現する。

 「組織の文化が一番大事だから。それを知りたい」と実施を提案したのは、いつものように水口真寿美弁護士(弁護士・薬害オンブズパースン会議事務局長)。

これに対して、ここ3回参加しているPMDAの近藤達也理事長が真っ先に手を上げた。
「私が昨年4月に着任した時、PMDAの組織の多様性にびっくりした。5年前に発足したのだが、元々は多くの組織の集合体。一つのまとまったものの考え方、共通のベクトルを持たないといかんということで理念を作ることにした。その意味では水口委員のアンケートしたいというのには共感する。こちらではアンケートまではしなかったけれど各人から提案をもらって半年位かけて5カ条の理念を作りあげた。これが現時点での組織文化。いわば5種類の混合ワクチンを職員の体内に入れた。それが生きているのか、消えてしまっているのか分からないが、アンケートをもらっても、どれだけバラつきがあるかはともかく、少なくとも外向きの対応はここから外れることはないはずだ」

 水口委員、苦笑しながら
「外向きの対応はこうである、と理事長さんは言うけれど、私たちの委員会としては現実にそこで働いている人たちが能力や良心を十分に発揮してほしいと願っているわけで、そのためにどうしたらよいのかという生の声をきちっと届けていただきたいという思いで提案させていただいた。これしかあり得ないから皆がこの通りに回答する、のであればやる意味がない」
 
 森嶌昭夫・座長代理(日本気候政策センター理事長)
「水口委員の気持ちは分かるが、これからの時間で我々に残されている課題を考えてみると、あと半年で安全対策に関して具体的な提案をしなければならない。私も色々とこの手の調査をやってきているけれど、こういう漠然としたアンケートでどういうものが返ってくるのを期待しているのか。そして返ってきた時に、その結果を来年2月3月までに、どうやって提言に反映、回答の中からどういうことを汲み取れると期待しているのか。提言に組み立てていくのに、どう役立つか想定しておられるのか。ただ何となくやるというのでは、国民の貴重な税金の無駄遣いになる」
 弁舌は止まらない。
「このようなアンケートから果たして意味のあるものが出てくるだろうか。そうでなくても時間がないのだから、やるのなら水口さんがPMDAへ行ってヒアリングして、その結果を持って報告されたらいかがか。この委員会として水口さんを派遣して、聴いてきてもらうのなら、私もどのように聴いてくればよいか知恵はお貸しする。これ以上の時間と労力と事務局の手間ヒマと国の予算を使うのには効果の点から反対だ。調査そのものに反対というのではなく、今からやっても効果が期待できない。労力を最小にするには、水口さんがボランティアでぜひおやりになるといい」

 水口
「私がヒアリングに行って本音を喋ってもらえると思うのか」

 森嶌
「人の心が読めないようでは弁護士は務まらないだろう」
 凄まじい嫌味で追い詰める。

 水口
「私も何が何でも実施すべきとは言ってない。ただ、組織のこととか人材育成のこととか議論しているのに、そこにいる人の声を聞かずに進めてよいものだろうかと思ったまでだ。労力はそんなに大変なものだろうか。問題意識のある人が何か書いてくださるのでないかというだけのこと。ただこの委員会のメンバーの中に一肌脱ごうという人がいなければ難しい。私自身は第三者組織をつくるワーキンググループのメンバーでもあるので、それをするのはどうかなと思う。とりあえず提案はさせていただいたということだ」
と、逃げに入った。話はこれで終わるかと思われたのだが、普段ほとんど発言しない山口拓洋・東大大学院准教授(データ管理)が手を上げ、そして事態は急展開する。

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