文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

「誘導するデータを厚労省は出してはいかん」 ─ 実調めぐり火花

■ 注目される西澤委員のスタンス
 

 嘉山委員が提出した資料は、日医の「診療所開設者の年収に関する調査結果(2006年分)の抜粋。これは、開業医(個人)の年収が病院勤務医の2倍であると指摘した財政審(財政制度等審議会)に反論する内容で、「開業医(個人)は収支差額の中から、退職金相当額を留保し、社会保険料、事業にかかわる税金を支払い、借入金の返済も行う。仮に比較するとしても、『手取り年収』で比較すべきである」としている。

 嘉山委員は、「国民に正しい情報を提示して議論するのが中医協」と指摘した上で、「厚生労働省は(社会保険料や税金など)こういうものを含めた実態を出していただきたい。こういうことを前提にして、今日の初診料・再診料の議論をするのがいいのではないか」と主張、安達委員もこれに続いた。

 従来、こうした資料は日医執行部の委員が提出するのが常だった。嘉山委員が提出した背景には、「パイの奪い合い」によって診療側が分裂することを避けようとした狙いがあるとみられる。新体制の中医協はまだ3回目を迎えたばかりだが、新委員の足並みは揃い始めたといえようか。しかし、新委員と距離を置いているのが西澤・邉見の日病協コンビ。彼らは厚労省と密接につながっているため、今後の動向が興味深い。

 11の病院団体でつくる「日本病院団体協議会」(日病協、小山信彌議長)は、団体推薦制が廃止された06年の中医協改革を受け、厚労省と意見調整をするためにつくられた団体。日病協がクビを縦に振れば、「病院団体が賛成した」というお墨付きを得ることができるので、厚労省にとって便利な存在といえるが、「医療安全調査委員会」の設置をめぐる議論では内部で意見が割れた。

邉見委員と西澤委員1106.jpg 来年度の診療報酬改定に向けて日病協は、「入院基本料の引き上げ」など病院団体がすべて賛成できるような"最大公約数"の要望にとどまることが予想されるが、もし、診療報酬の抜本的な見直しにかかわるような大胆な提案が新委員から提案された場合、果たしてどうするか。

 西澤委員と邉見委員は今回の中医協人事で外される可能性が高かったが、医療課の強い粘りで巻き返したとの声もある。両者の中医協での発言を聴く限り、邉見委員は新委員と付かず離れず、医療課とも良好な関係を保てる位置をうまくキープしている。
 一方、西澤委員は半ば黙秘を決め込んでいる。今後、安達委員が開業医(日医)の立場を代弁し、嘉山委員が特定機能病院(大学病院)の立場で主張した場合、中小病院の意見を誰が代弁するのだろうか。

 現在、その役割を新任の鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)が担っており、西澤委員の存在感は薄い。安達・嘉山両委員が攻めの姿勢を見せる中、西澤委員の立ち位置が注目される。
 
 この日、嘉山・安達両委員の追及に対し、支払側の白川修二委員(健保連常務理事)が「診療側の意見はこれだけか」と質問、診療側の切り崩しに入った。これに対し、西澤委員は「2号(診療)側全体で統一はなかなか難しいので、『それぞれ』ということになります」と回答した。
 厚労省が中小病院の切り捨てを進める中、全日本病院協会は医療課の支援に回るか、それとも中小病院の存続を守ることができるか─。「医療経済実態調査」をめぐる議論は次ページ以下を参照。


 【目次】
 P2 → 注目される西澤委員のスタンス
 P3 → 「実態と離れている」 ─ 嘉山委員
 P4 → 「日医としては勤務医の給与が低いと思っている」 ─ 安達委員
 P5 → 「回収のバイアスがあるのではないか」 ─ 安達委員
 P6 → 「平均値より上にたくさんのプロットが落ちるのでは」 ─ 安達委員
 P7 → 「2号側全体で統一はなかなか難しい」 ─ 西澤委員
 P8 → 「誘導するようなデータを出してはいかんよ」 ─ 嘉山委員


  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス