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ニュース〜医療の今がわかる

診療報酬上げても大部分は付け替え ~『現場』討論1


 亀田
「一つは診療報酬が今のままの体系だと基幹病院というのは先程お示ししたように都立病院は40%上げても赤字であるという状態。仙谷大臣が仰ったように公的医療機関の体質改善ということも必要になる。私自身、実は国立大学法人の改革に4年間携った。その時の経験からも本気でリーダーシップをとれる人がいれば、相当な改革ができると思う。

 これは、ナショナルセンターやその他の病院についても言える。ただし、独立法人化しても、リーダーシップの無い人がやったら何の意味もない。全く変わらない。それと、できれば独立法人化する時に、人事給与体系も抜本的に変えていく。その代わり負の遺産はあまり背負わせないということが大事だと思う。

 それから、診療報酬を何%上げるといくら必要になるかという計算は当たっていない。なぜかと言えば、先程ご覧になった通り、全国の自治体病院だけで一般会計からの繰り出しが7千億円ある。総務省やその他の管轄でその位。それ以外のいわゆる診療報酬以外からの繰り出し金は2兆円に迫るものがある。診療報酬を上げたところで、実はこの繰り出しの一般会計やその他の会計からの繰り出しの部分が相当部分、実は基幹部分は何と言っても公立病院がかなりの部分を占めるので、相当な部分は実は付け替えになる。従って、例えばそこで6千億円や1兆円増えたとしても、実質上トータルの場で計算をすればすぐに出るが、おそらく実質は2、3千億円だろう。

 それによって、自民党の本当に有効に活用されるか分からないようなバラマキ体制を全部診療報酬に振り替えるというやり方をすることによって、健全な経営に持って行くことがかなりできると思う。加えて、今後進んでいくであろうナショナルセンターの独法化等も踏まえて強いリーダーシップを育てていくということで、公立病院の内容、あるいは経営どちらから見ても良いものになっていくと思う。

 先程ちょっと最後に申し上げたが、日本の医療や病院の中で病床数の70%を民間が支えている。救急医療の過半数は民間の病院が受け入れている。ヨーロッパにはこういう所は1カ所もない。アメリカも民、民と言うが、特にキャピタルコストの部分、基幹病院を1ヵ所作るためには数百億円というキャピタルコストが掛かる。これについては、ほとんどがパブリックから出されている。世界中どこでもそう。これを出していないのは日本ぐらいのもの。

 これは、昨年の財務省の研究会で、何か亀田先生調べることはありますか海外に視察に行ってくるのでということで、海外においてキャピタルコストの部分がどうなっているかを調べていただきたいと申し上げた。ほとんどのところでキャピタルコストと、いわゆるキャッシュフローベースのPL部分とB/S部分については、概ねどこの国でも仕分けがされています。という返答があった。

 日本では、このキャピタルコストの部分を、例えば厚労省に訊いてみると、もしかしたら基本入院料に入っているかもしれないし、検査とかに入っているかもしれない、実は議論したことがないと白状されている。さらに社会医療法人という制度を作って、これは持ち分なしの要するにパブリックだと言うのだけれど、そしたら、そこのキャピタルコストはどうやってスタートするのですかと。キャピタルコストの議論が何もない。資本はいけない、株式会社はいけない、これもいけまない。一銭のお金もなくて、どうやってその病院をスタートすることができるのか。そういう非常に欠陥だらけの制度を作っている。

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