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ドラッグ・ラグ解消策で、ドラッグ・ラグが加速? ─ 「薬価維持特例」に難題

■ 「有識者会議が一体どういうものか説明していただきたい」 ─ 牛丸委員
 

[牛丸聡委員(早稲田大政治経済学術院教授、公益委員)]
 実は、嘉山委員が質問する前に(薬価専門部会で質問しようと思った)......。もしかしたら私、昨年の最後に欠席したので、その時に説明があったのかなあと思ったんで、先ほどの「(薬価専門)部会」の時にはお聞きしなかったんですけれども......。

 今、私は(有識者会議の)人選について問うつもりはないんですけど、「有識者会議」ですね、仮称、これがどんなものなのかがよく分からなかったもので、それを説明していただきたいと思ったんです。

 その前に嘉山委員からそういう質問があって、さらに人選の所まで(議論が)行きました。私はそこを聞くのではなくて、ただ全体の(新薬の薬価改定)制度の中で、「有識者会議(仮称)」という名称が出てきていますので、これが一体どういうものなのか、説明していただきたい。

 ▼ 意外な展開。そういえば昨年末、薬価専門部会が終了した後のブリーフィング(記者説明)で「有識者会議」の内容に関する質問が業界誌の記者から繰り返し出ていたが薬剤管理官から明確な回答はなく、ずっと闇に包まれたままだった。
 現在、メディア関係者の間で出回っている「開催要綱(案)」によると、同会議のメンバーは「薬物療法に関する医学的・薬学的な学識経験を有する者」で構成し、各疾患領域に対応するらしい。構成員は20人で、堀田知光・名古屋医療センター院長の名前の所に「座長」を示す◎マークが付いている。同会議の下に7つの「専門班会議(ワーキンググループ)」を設置するという。なお、1月29日の総会後に行われたブリーフィングでも、薬剤管理官は「有識者会議」の内容を明らかにしなかった。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 薬剤管理官、よろしくお願いします。

[保険局医療課・磯部総一郎薬剤管理官]
 「有識者会議」の役割としてはですね、実際に、「この薬を開発してほしい」という(要望が)、例えば学会や患者団体の方々から、例えば、「この薬のこの適応がなくて、欧米の国では認められているけれども、日本ではこの適応が認められていないのでなんとかこの適応を取るようなことをやってほしい」という要望ですとか、「そもそも欧米で認められている薬が日本では未承認薬になっていて使えない、開発をなんとか進めてほしい」といった要望がいろいろな関係の学会ですとか患者団体からございます。

 そういったものが実際に厚生労働省に寄せられております。昨年の6月から8月に募集したところ、先ほど嘉山委員が(370件と)おっしゃったような、300件を超えるような品目が出てきております。
 それについて、実際にそれを整理してですね、「医療上の必要性」があるのかどうか、開発すべきものかどうか、そういったことをですね、「有識者会議」でいろいろな関係の先生方に集まっていただきまして、それを確認していただいて、「医療上の必要性」の高いものについてですね......。

 ▼ つまり厚労省としては、「有識者会議」が適切に優先順位を判断して、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査業務に支障が出ないよう配慮すると考えているのだろう。しかし、委員名や議事が公開される「有識者会議」で承認が後回しにされると、学会や患者団体などの不満をまとめて引き受けることになりかねない。このため、患者団体などから寄せられた要望をそのまま通してしまうことも考えられる。そうすると、約370件の未承認薬・適応外薬の開発は進んだが、それが原因でPMDA(医薬品医療機器総合機構)の本線の審査が遅れ、さらにドラッグ・ラグが拡大することもあり得る。こうした事態を心配する声が既に患者団体の関係者などから出ている。
 

【目次】
 P2 → 「平成22年度実施の薬価算定基準等の見直し案」を提示 ─ 厚労省
 P3 → 「ドラッグ・ラグはさらに進む」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P4 → 「本当に有識者かどうか分からないような人もいる」 ─ 嘉山委員
 P5 → 「有識者会議が一体どういうものか説明していただきたい」 ─ 牛丸委員(公益)
 P6 → 「政務三役に説明して了解を得ながら進めていく」 ─ 薬剤管理官

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