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医療機関の情報公開と患者のプライバシー

■ 「大きな枠組みは前回提出したものと同じ」 ─ 厚労省
 

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 (先発品よりも高い後発品の取り扱いが継続審議となった後)引き続きまして、次の案件もなかなかもめそうな案件でございますが、明細書について議題としたいと思います。
 一昨日(2月3日)の議論を踏まえまして、事務局(保険局医療課)より資料が提出されておりますので、説明をお願いしたいと思います。(保険医療)企画調査室長、どうぞ。

[保険局医療課・渡辺由美子保険医療企画調査室長]
 はい、保険医療企画調査室長でございます。それでは、お手元の資料、「総─5─1」、「5─2」、それから「参考(資料)」という3種類の資料を付けております。これに沿いまして、ご説明を申し上げます。

1. 前回の提案
 一昨日(2月3日)の総会では、事務局から明細書の発行につきまして(説明したが)、現在、(レセプトの)電子化請求の義務付けがある(400床以上の)保険医療機関につきましては、「患者の求めがあった場合に発行する」という仕組みになっておりますが、これを「原則、(すべての患者に無料で)出していく」という方向に決めていくというご提案をさせていただいたところでございます。

< 明細書発行義務化の拡大 ─ 前回の提案 >
(1) レセプト電子請求が義務づけられている保険医療機関等について
 レセプトの電子請求を行っている保険医療機関等が使用しているレセコンは、明細書発行機能が付与されているものが大半(注1)であり、また、検証部会の調査結果では明細書の発行は大半が無償で行われていることから(注2)、明細書発行義務を拡大する基盤は整いつつある。
 一方で、既存機器の改修等が必要な医療機関もあること等を考慮しつつ、今般、患者から求めがあった場合に明細書を発行するという現行の取扱いを改め、レセプトの電子請求を行っている保険医療機関等については、以下に掲げる正当な理由のない限り、全ての患者に対して明細書を無料で発行することとする。
 大きな方向性につきましては、「それほど大きなご異論はなかった」と理解しておりますが、ただ実際にこれを行うに当たりまして、さまざまなご懸念というものが診療側の委員から出されたというふうに理解しております。

2. 前回の議論
 そこで、(資料)「総─5」(明細書発行に関する論点の整理)でございますが、診療側の委員から出されました主な懸念事項につきまして、事務局で大きな2つのくくりに分けて整理をさせていただいております。(中略)

 ▼ 説明は資料通り。

Ⅰ 診療側委員から示された主な懸念事項
1. 事務・費用負担に関する事項
  ・ 患者からの照会の増大とこれに対応するための体制確保
  ・ 新たなレセコンやソフトの購入費用
  ・ 明細書発行に一定の時間を要することに伴う体制確保費用 等

2. 患者に関する事項
  ・ 病名告知の問題
  ・ 患者本人以外の者に患者の個人情報が提供されるおそれ
  ・ 患者の待ち時間の増加 等

Ⅱ 上記を踏まえた対応(案)
 今後、地方厚生局への届出により、各保険医療機関等の明細書の発行状況が把握できるようになることを踏まえ、平成22年度以降、以下の項目を中心に検証を行うこととしてはどうか。
 ① 発行実態(発行枚数、費用徴収の有無及びその金額 等)
 ② 事務・費用負担(患者からの照会件数、体制確保の状況、設備整備に要する費用 等)
 ③ 患者への影響(待ち時間の増減、苦情の有無等) 等

▼ つまり、明細書発行に伴うさまざまな問題は、改定した後に中医協の検証部会で調査することとして、「とりあえずやってみましょう」「検証するからいいよね」ということ。この理屈は、他の改定項目でも頻繁に使われている。「検証しましょう」以外の逃げ道として、「それは答申の付帯意見に入れましょう」とか、「具体的な内容は通知事項でやりましょう」─などがある。
 これら3つの手法を色分けすると、▽半永久的に決着が付かない項目 → 「検証しましょう」 ▽ちょっと先延ばしにしたい項目 → 「付帯意見に入れましょう」 ▽重要なので医療課が権限を握りたい項目 → 「通知事項にしましょう」─という感じだろうか。今回の明細書発行の具体的な運用方法も通知事項。ちなみに、あまり議論されずに通知事項になったものの中に、「入院中の患者に係る対診・他医療機関受診の取り扱い」がある。今回の改定では救急医療、診療所の再診料が特に脚光を浴びているが、実は「対診のルール化」が最も重要な改定項目かもしれない。「病院から呼ばれない開業医は食えなくなりますよ」という方向に進むのだろうか。

3. 今回の提案
 それで、(資料)「総─5─2」(前回資料の修正版)でございますが、これは前回お出しした「短冊」(改定事項)でございまして、ポイントとなっている(のは)2ページの所でございます。

< 明細書発行義務化の拡大 ─ 今回の提案 >
(1) レセプト電子請求が義務づけられている保険医療機関等についてレセプトの電子請求を行っている保険医療機関等が使用しているレセコンは、明細書発行機能が付与されているものが大半(注1)であり、また、検証部会の調査結果では明細書の発行は大半が無償で行われていることから(注2)、明細書発行義務を拡大する基盤は整いつつある。
 一方で、既存機器の改修等が必要な医療機関もあること等を考慮しつつ、今般、患者から求めがあった場合に明細書を発行するという現行の取扱いを改め、レセプトの電子請求を行っている保険医療機関等については、以下に掲げる正当な理由のない限り、原則として明細書を無料で発行することとする。
 その際、保険医療機関等においては、その旨を院内掲示等により明示するとともに、明細書の発行を希望しない患者等への対応については、会計窓口に「明細書を希望しない場合は申し出て下さい」と掲示すること等を通じて、その意向を的確に確認できるようにするものとする。
 実際に、実行していくに当たってのさまざまなご懸念と併せまして、「全員発行」と言っても、まあ、「そもそも患者さん自身がいらないというような場合にまで出すというのはどうだろうか」というご意見がありました。

 (全員発行について)前回、ちょっとやや事務局の案が粗く書いていたこともありまして、そういった点についても少しきめ細かく書いていこうということで、若干でございますが「短冊」(改定事項)の修正をしております。
 その下線(上記太字部分)を引いてある所でございますが、大きな枠組みは前回提出したものと同じでございまして、レセプトの電子請求を行っている保険医療機関につきましては、正当な理由のない限り、すなわち(自動入金機の改修が必要など)以下のような例外を除いては、「原則として明細書を無料で発行していく」ということでございます。

 その際に、各保険医療機関ではその旨をしっかり院内掲示していくということ。それから、明細書の発行を患者さん等につきましては、例えば、会計窓口に「明細書を希望しない場合は申し出て下さい」というような掲示を行うこと、こういったことなどを通じまして、「その意向を的確に確認できるようにするという形にしてはどうか」ということでございます。

 従来通りの扱いになる例外(正当な理由)については、前回提示した通りでございます。(中略)

 ▼ 例外について説明。その後の議論で、「(明細書発行機能が)付与されていても画面の切り替え等のために一定以上の時間を要するレセコンを使用している保険医療機関」の部分を削除することで合意した。
 また、「DPCに関する明細書」については、前回の勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)の要望を受け、「入院中に使用された医薬品、行われた検査について、その名称を付記することを原則とする」という記載に修正した。この点について反対意見はなかった。

「正当な理由」 (了承済み)
① 発行関係
 イ 明細書発行機能が付与されていないレセコンを使用している保険医療機関等である場合
 ロ 自動入金機を活用しており、自動入金機で明細書発行を行おうとした場合には、自動入金機の改修が必要な保険医療機関等である場合
② 費用徴収関係(実費徴収が認められる場合)
 上記①のイ又はロに該当する場合

4. 国立病院等での明細書発行状況
 それから、「参考(資料)」でございます。国立病院等では先行して、患者の求めの有無にかかわらず発行しているということで、その実態はどうなのかということでございまして、私どものほうで関係部局に問い合わせた状況でございます。(中略)

 ▼ 説明は資料通り。

< 国立病院等での明細書発行状況について >
1. 国立病院等での明細書発行状況について
 (1) 国立高度専門医療センター(ナショナルセンター)での発行状況(8病院)
   全ての施設において、患者の求めの有無にかかわらず、入院・外来ともに全患者に無料発行
   (※ DPCの投薬・検査の項目についても記載)

 (2) 国立病院機構での発行状況(145病院)
   方針:国立病院機構全病院で、患者の求めにかかわらず全患者に対して無料で発行する方針。

   現状:平成22年1月現在での状況は以下のとおり。
    ・ 入院、外来ともに発行 16病院
    ・ 外来のみ発行 2病院

    ・ 年度内実施予定
      入院・外来ともに発行 9病院
      入院のみ発行 1病院

    ・ 平成22年度実施予定 45病院
    ・ 平成23年度以降実施予定 72病院 
      ※年度内実施も含め、予定であり変動はあり得る。

2.全患者への発行による問題点の有無
 (1) 国立高度医療センター
   医政局政策医療課によれば、全てのケースを把握しているわけではないが、患者への告知やプライバシーの観点から実際に問題になったケースの報告は受けていないとのこと。

 (2) 国立病院機構
   国立病院機構本部によれば、全てのケースを把握しているわけではないが、患者への告知やプライバシーの観点から実際に問題になったケースの報告は受けていないとのこと。
   なお、国立病院機構本部では、病名の告知については、会計時において病名を知り得ることが考えられることから、特に悪性腫瘍等の患者で非告知の場合は、患者の家族等に本取り組みを行うことの周知徹底を図るなどの配慮が必要という旨の注意喚起を各病院に対して行っている。

 とりあえず、前回の議論を踏まえての修正点の説明は以上です。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 はい、ありがとうございます。前回の議論を踏まえて若干の文言修正がなされたものが改めて出てきましたので、これについてご意見を頂きたいと思います。白川委員、どうぞ。


【目次】
 P2 → 「大きな枠組みは前回提出したものと同じ」 ─ 厚労省
 P3 → 「この案で2号側の先生方のご了解を得たい」 ─ 白川委員(支払側)
 P4 → 「現状では賛成できないが、賛成したい」 ─ 渡辺委員(診療側)
 P5 → 「国家が責任を負う制度にしていただきたい」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P6 → 「現場の忙しい医療機関に負わせるのは大変」 ─ 邉見委員(診療側)
 P7 → 「今後何が起こるか非常に不安がある」 ─ 鈴木委員(診療側)
 P8 → 「より分かりやすいものを段階的に検討する必要がある」 ─ 三浦委員(診療側)
 P9 → 「私は賛成する立場で特に何も問題はない」 ─ 安達委員(診療側)
 P10 → 「綺麗にしていこうと努力する情報開示の力がきっとある」 ─ 勝村委員(支払側)

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