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ニュース〜医療の今がわかる

「いいチームになった」 ─ 揺れた中医協の診療側に一体感

■ 「日本の制度疲労が一番露呈している場が医療」 ─ 嘉山委員
 

[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
1. 中医協について
 まず中医協に入った最初の感想はですね、この戦後63年ですか、日本のいろんな制度疲労の一番極端な、あるいは露呈している場が医療だなという感じがしました。

嘉山孝正委員0212r.jpg 中医協の議論を聴いていてもですね、医療を受ける患者、あるいは国民とは関係ない議論、論理が通っている。

 それはどういうことかと言うと、例えば医療にかかる資源ですね、それは国民が受けているわけですけど、「その資源をどういうふうに計算して医療費にする」、あるいは「診療報酬にするか」という議論ではなくて、「今あるお金の中でどういうふうに各部門が取り合いをするか」という(議論)......。

 「パイの取り合い」と言いますけれども、それが行われていて「非常に悲しい協議会だな」と思いました。「悲しい」というのは、反対に言うと「何の建設的なものも生まない」というようなことであります。

 このことは何も医療だけではなくて、あなた方、マス(メディア)、ジャーナリストも同じで、「この国家をどうするか」というグランドデザインがこの国にはないんですね。ですから、「医療をどうする」ということも出てこないし、「ジャーナリストがどういう生き方をしていくか」も出てこない。例えば......。

2. 日本の医療政策について
 ちょっと話は長くなりますけれども、ジャーナリストであれば、どういうふうなスポンサーシップ、あるいはどういうふうな経営基盤を持って自分のジャーナリズムを貫いていくのかというのがありませんよね。
 「記者クラブ」なんていうのがあって、世界に類を見ない「記者クラブ」をいまだにやっている、この国は。「本当のジャーナリストはいるのか」というようなことと同じように、我々の医療人の中にも自浄......、自浄というのは「自分で浄化する」ですけど、自浄してこなかった大きな反省があります。

 えー......、とは言ってもですね、ここ(中医協)に入ってきて(遠藤久夫)会長から何度か「そのルールではありません」と。今、西澤先生がおっしゃったように、この医療費で医療が動いているんですよね、現実には。診療報酬を決めることによって。
 ですから、なるべく足立(信也・厚生労働大臣)政務官がおっしゃったような「現場が困らない」「現場で問題が起きない」......。現場というのは何も医療人ではありません。患者さんに困ることが起きるわけです。

 例えば、(海外で承認されている薬が国内で使えない)「ドラック・ラグ」1つ取ってもそうですし、医療を施行する医療側が「お金の問題でいい医療を躊躇する」というようなことが起きてはならないと思うんですね。
 なぜかと言えば、医療というのは、どの国でもですね、社会の......、(国民の生命や安全を守る)警察と同じですね、セーフティーネットの最低限の所ですよ。それがしっかりしていない国であれば、これはあの......、そういう国には申し訳ないのですが、「三等国」「五等国」と言わざるを得ないんですね。それ(国民の安全保障)をこの国が60何年間、放っておいたんですね。

 私も、病院長になる10年ぐらい前は医学研究と脳外科の手術の腕を磨く、あるいは薬を作る......(ことが中心だったので)、そういうこと(日本の諸制度を検討することなど)をしっかりやってこなかったのですが、病院長になってから「何かおかしい」ということで......。
 先ほど鈴木先生がおっしゃったような、いろんな制度を勉強してみてですね、もう一度、ここで国民に考えてもらわなきゃいけない時期だと思います。この国が「三等国」「五等国」にならないためにですね。

 それは......、一番いい方法は、後でもまた声明の所で述べますけれども、また同じことを足立政務官もおっしゃっていましたが、正しい情報を国民の前に全部出す。これは東大の前総長の佐々木(毅)先生も何度か論壇に書いていますけども、正しい情報が国家に流れていないんですよ。
 風聞とか、あるいはテレビの井戸端会議レベルのことが平気で国家の施策として決められているこの国が今......。僕は「国自体が沈没しかかっているんじゃないか」というのをこの中医協に入って感じました。

3. 今後に向けて
 従って......、えーっとまあ......、次年度からは我々も慣れてきましたので、厚生労働省が(改定項目の論点など)「問題」を出すのではなくて、我々の方から現場の問題を持ち出して、それを診療報酬に充てていくというようなことをしてみたいと思います。

 今回、もう1つ加えると、大学(病院)を含む「特定機能病院」の代表として(中医協委員に)入りましたが......。「代表」というのはどういう意味かと言うと「その現場を知っている」という意味です。「そこにお金をよこせ」という意味ではありません。
 それで分かったことは、日本の医療は医療費では行われていない。つまり、「税金の不正流用で行われていた」ということが明らかになったわけです。それは皆さんの前にも(中医協で)私がスライドを使って説明した通りです。

 例えば、市町村の病院であれば、県民税あるいは市民税として取った税金をその病院に投入して何とか経営をやりくりする。これ医療費じゃないんですよね。ひじょーに不透明な税金の扱いをこの国はしている。大学であれば法人化前は34%......、東京大学(医学部)の附属病院は「運営費交付金」という教育で......、みんなが納めた税金を投入しているわけですよね。

 従って、もう一度、国民の前にすべての情報を......。我々最初に(中医協に)入った(10月30日)......、安達先生と鈴木先生と私が最初に入ったこの中医協で出てきた(厚労省の医療経済実態調査で示された)開業の先生方の収入(が病院勤務医よりも多いというデータ)......、あんなものデタラメもいいところで、ああいうデータを使って議論しようということ自体が議論の前提になっていないわけですよね。
 従って、正しい情報を......。それは(マスコミの)皆さんにも協力していただきたいんです。なぜかって言うと、(税金の不正流用など)嘘をやればいつかは絶対にばれます。嘘をやってはいけないんですよね。厚生省は今まで嘘をやってきました。2年前まで、「医者が余っている」と言っていたのはどこですか、厚生省ですよ。

 もちろん人間は間違いがあるし、私だって嘘とは思わないけれども間違いを犯すことはたくさんありますけれども、「すぐ修正をして国民に迷惑を掛けない」ということを今後、この中医協でやっていくことが大事なんじゃないかというように思います。

 それからあと、(昨年11月27日の中医協のプレゼンで)「特定機能病院の現実が分かっていただけた」ということだけでも、少し役に立てたかなというふうに考えております。以上です。

[邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)]
 ありがとうございました。それでは安達先生。


【目次】
 P2 → 「中医協を改革する」 ─ 診療側に一体感
 P3 → 「まだまだ納得できるものではない」 ─ 三浦委員(日薬)
 P4 → 「再診料の引き下げは残念」 ─ 鈴木委員(茨城県医師会)
 P5 → 「誤解の下で議論や対立があったことは残念」 ─ 西澤委員(全日病)
 P6 → 「日本の制度疲労が一番露呈している場が医療」 ─ 嘉山委員(山形大)
 P7 → 「元凶は財務省、越権行為のように踏み込んだ」 ─ 安達委員(京都府医師会)
 P8 → 「歯科の審議が少なく、消化不良だった」 ─ 渡辺委員(日歯)
 P9 → 「肉体はしんどかったが精神的には楽しかった」 ─ 邉見委員(全自病)

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