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ニュース〜医療の今がわかる

村重直子の眼8 内田健夫・前日本医師会常任理事


村重
「毒性がどうかというのは、流行ピークが過ぎた後に結果論として分かるものであって、毒性が分からないから、ピークが来る前にできるだけたくさんの人にワクチンを打てるようにすることが、国の対策の中核となるはずなんです。でも役人は、そのために必要な、ワクチンの供給スピードを考えず、供給は手遅れでしたし、法律にきちんと位置づけることもしませんでした。少し誤解している人もいるようですが、法に位置づけたとしても、国民が接種を強制されるわけではありません。実質的には任意接種と同じように自分で打つか打たないか決めます。法に位置づけるかどうかで違うのは、副作用など何か有害事象があったときの補償の金額です」

内田
「姑息な総括で合理化して姑息な改正をするということではなくて、これからの本当に子どもたちを守る、国民を守るためにどういうことをするべきかということを、しっかり議論したうえで改正すべきでしょう。で、必要な所にはカネをつける。それが決して無駄ガネにはならない、という政策を出してもらいたいですね」

村重
「そうですね。姑息ですね。去年やったことを、ただ正当化して法律に組み込んでしまうような改正です。去年やったことが間違っていたと思っている人もたくさんいると思いますが」

内田
「間違っていた点もたくさんあったということは言えるでしょう」

村重
「でも、それをそのまま法律に入れてしまおうという役人の方針です。予防接種部会で、『パッチワークの法改正をさせてほしい』と官僚が説明したのに対して、委員の黒岩祐治さんが『根本的な議論ができないうちに急ぐんなら、特措法でいいじゃないか。なぜ法の本体に入れるんだ』と言っておられました。その通りだと思いますが、結局、役人の結論ありきの方針になってしまっている感じですね。次の新型インフルエンザが発生した時に、必ずまた同じことを繰り返すような法律になってしまいますし、新型インフルエンザに限らず、子どもたちの定期接種をどうするのか、接種率をどう高めるか、費用負担どうするのか、無過失補償・免責制度、データベース公開といった根本的な議論はないままです」

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