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子ども亡くす親の気持ち分かり合える機会が減ってきた―細谷亮太聖路加国際病院副院長

 子どもの死亡率の低下は、子どもを亡くす親の数が減るという事も意味するため、悲嘆の気持を共有できる機会も減る。近年まで「不治の病」と言われた小児がんの治療が飛躍的な進歩を遂げる一方で、子どもや親を取り巻く状況も変わりつつあるようだ。聖路加国際病院の細谷亮太副院長(小児総合医療センター長)が24日、中野在宅ケア研究会(東京・中野区)で講演した。(熊田梨恵)

hosoya.jpg 中野在宅ケア研究会は中野区の在宅医療や福祉関係者らの集まり。代表の宮地三千代氏(宮地内科医院院長、中野区医師会幹事)らは、在宅で重症児と暮らす母親の集まりを支援するなどの活動も行っている。この日は細谷氏を招いた講演会を行い、区内外から在宅ケアの医療福祉関係者や重症児を持つ母親らが集まった。

 講演テーマは「小児がんの子どもたちに携わった40年を振り返って」。以下は、細谷氏の講演内容の一部抜粋。


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スライド1.JPG最初は小児がんについてお話します。小児がんは昔から大体同じ数で起こっています。診断技術が進歩したので発症頻度が増えているように感じますが、死亡数は確実に減ってきました。大人の場合は、がんはごくごく普通にある病気で2、3人に1人はがんになるので珍しい病気ではありません。ただ、20歳までに起こる小児がんは珍しい病気で、子どもを1万人ぐらいずっと見ていると、1年間に1人ぐらいぽこっと小児がんが発生します。500人ぐらい小学校があったとして、そこの保健の先生が20年ぐらい見ていると当たるかもしれない、保健の先生を一生していても小児がんに当たるかどうかは分からないというぐらいに珍しい病気です。
 
小児がんは大人のがんとは全然違って、種類が違うんですね。大人のがんは大腸がん、肝がん、肺がんとか臓器ごとにがんが発生して、たとえば食道に発生するがんとして扁平上皮がんなどいろんながんの種類が発生します。でも子どもにはそんながんはほとんどない。子どもに肺がんが起こるのは小児がんのうちの0.数%。大人と同じ胃がん、大腸がん、卵巣がんは数%で、99%近くは肉腫と呼ばれるような筋肉、骨、血液から出るような種類です。
 
スライド2.JPG大人のがんと子どもを比べると、大人はポリープがだんだん育って、発がんを促進するような、食べている物の種類とかで遺伝子変異が起こります。多くの遺伝子変異を必要として大人のがんは起こります。いろんながんがあるし、増殖スピードが非常に遅い。みなさんは、がんは早く増殖してあっという間に人の命を取ってしまうと思いがちだと思いますけど、乳がんなんかは一つの細胞が悪化して1センチになるのに5~10年かかるんですね。そのぐらい経ってゆっくり大きくなってから、近くのリンパ節に飛んで、他のところに転移していきます。だから大人のがんは切れば治っていたんです。外科でちゃんと「取る」というのが大人のがんの治せるポイントで、うまく取れない場合は、内科の化学療法が出てきます。ただ、ある程度伸びることには伸びるのですが、最終的にはそんなに長くなくまたがんが発生していく。
 

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